STORY
□「君色想い」
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「…ったく…こんな天気の良い日に英語の授業なんて受けてられるかっての」
ぶつくさ文句を云いながら、気怠そうに屋上への階段を登って行く姿が一つ。
ドアの前に辿り着くと先客がいるかどうかなど介することもなく勢い良くドアノブを回し、引いた。
「うわ、まぶし…」
ドアを開けた途端飛び込んでくる太陽の日差しと、澄んだ真っ青な空。
日差しの強さと空の鮮やかさに。赤也は一瞬眩しそうに目を細めた後、そのまま屋上へと出る。
「やりっ♪誰もいねぇじゃん!」
屋上に誰の姿もないことを確認すると、意気揚々とお気に入りの場所へとドッカリと腰を下ろした。そしてゴロリと仰向けに寝転がる。
目の前に広がるのはどこまでも高い空。
(あーあ…早く放課後にならねぇかな…)
(今頃幸村部長はちゃんと授業受けてるんだろうな…顔、見たいな…)
空を眺めながら、そんな取り留めのないことを考える。
――ガチャ…バタン
その時、聞こえてきた屋上のドアが開き、閉まる音。
(また丸井先輩か仁王先輩っスかね…?)
屋上でよく会う二人の姿を思い浮かべながらも赤也はその場を動くことはない。
「赤也…こんな処でサボリなんていい身分だね?」
しかし視界に飛び込んできたのは、想像していた鮮やかな色ではなく…全く想定外の、藍色。
「…えっ…?」
その普段は有り得ない状況に、赤也は相手の顔をボーッと見詰めたまま思わず固まった。
「ゆ…幸村部長!?どうして此処に…!?」
無理もない…正に今想っていた相手が目の前に現れたのだから。
「取り敢えず…隣座ってもいいかな?」
「あ…はい。どうぞ!!」
「ありがとう」
すぐには赤也の問いに答えずに、礼を云うと幸村は赤也の隣へ座った。相変わらず呆然と見詰めてくる赤也を面白そうに眺め、幸村は話し始める。
「ちょっと気分が悪かったから…外の空気でも吸えば良くなるかと思ってね」
「えっ…大丈夫なんスか!?」
「…大丈夫だよ?赤也の顔見たらすぐに治っちゃった」
心配そうな表情を浮かべる赤也に、ニッコリと綺麗な笑顔を向ける幸村。