STORY

□「愛の言葉」
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−好き

何度も心の中で唱えた言葉。
もう何十回、何百回と唱えた。

今日こそ自分の素直な気持ちを伝えたい。

今まで何度も唱えた思い。


でも実際は‥


***

「‥‥」

「ん、どうした?サエ」

「‥何が」

「え、何怒ってんだ。さっきらかそんなに睨み付けて来て」

「バカ、怒って無い」

「は!?」

本人を目の前にするとどうしても言葉が詰まる。
一応付き合ってるのに、俺はバネに未だかつて自分の気持ちを伝えた事が無い。

交際を始めたキッカケもバネからの告白だった。


−好き

喉の奥でいつも引っ掛かる。
素直になれない俺。


最悪、目茶苦茶可愛げが無い。

どうしてこんな俺をバネは好きになったんだろう。
俺だったら、自分みたいな奴絶対に嫌だ。

何も言えずバネの前で佇む。偶然にも部室内は2人きり。どうしても素直な気持ちを言いたいから部室から出て行けない。チャンスは今しか無いんだ。

「お前何か言いたい事があるんだろ」

こんなにも、バネはパスを出してくれて居る。

「何も無い」


−でも言えない。


「サエは言いたい事がある時はいっつもそうやって黙って突っ立ってるよな」

俺の性格なんてバレバレで、まるで全てを見透かされて居ているみたいで、俺が今、何が言いたいかくらい分かって居る筈。

「うるさい‥!」


−でも言えないんだ‥


たった2文字の言葉。簡単な筈なのにそれが言えないなんて、俺もどうかしてる。

俺の胸の奥に重くのし掛かる「好き」と言う言葉。中途半端な愛情なら簡単に言えるだろう。
でもその言葉の意味が大き過ぎて、なかなか言葉にする事が出来ない。


−駄目だ、やっぱり言えない


もどかしい程に時は刻一刻と過ぎて行く。

「サエ?」

俺は君に何度名前を呼ばれただろう。

「おい、サエ」


もう無理。こんなに時間が経過してしまっては、勢いで言う事は不可能。


−タイムオーバー


俺は諦め、バックを持ち部室のドアの方へ向かう。今日の目標は無残にも終わった。

「じゃあね、バネ」


正直泣きそうだ。


−ガチャ

ドアノブを手に取り

静けさと共にドアが開く


「‥サエっ」


その瞬間、君は俺の名を呼び


−ガシッ


腕が掴まれ

体が引き寄せられる


顔が近い

吐息が掛かる


まるで秒速の中に居るみたいに景色がスローモーション。

「バ‥っ!」

ゆっくりと唇が重なり

「‥ん、っ‥」

そして君は俺にキスをした。



「愛してるぜ」

唇が離されたと思ったらバネから送られて来たのは「愛してる」の言葉。

信じられない‥!俺なんて「好き」って言葉すら言えないのに。そんなにもあっさりと言えて、しかも、そんな明るい笑顔なんか浮かべて。

やっぱりこの人には勝てないや。


「バネには敵わない‥」

俺は君の裾を掴んで勇気を振り絞る。
決意が付いた。
今なら、素直に君に想いを伝えられる気がするんだ。

抱き締められた胸の中から見上げると、俺よりも背丈の高いバネと目が合い俺は小さく呟いた。


「俺も、好‥」
−バタバタっ、ガチャ!

「ーーっ!?」

「あ、サエさん、バネさん、今から帰り?‥ん、あれ、どうしたんすか」


有り得ない。タイミング悪過ぎだろ!


「「ダビデぇえ‥!」」

「え?なっ、何で2人とも怒ってるんだ‥」


タイミングの悪い天根の所為で2人はガクンと肩を落としたのだった。







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素敵小説サイト、lrでキリ番を踏みまして、憧れの和希ねお様から素敵バネサエ小説をいただきました!
凄く理想の3人でキュンとせずにはいられません・・!本当に有難う御座いました!大好きですっ!

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