Ace of Diamond

□3.
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少し前に約束した翼とのキャッチボール

僕が緊張しながら立ってると翼はにこにこしながら

『行くよ――!』

とボールを投げ始めた


あまりよく知らないけど翼のボールはやっぱりそのへんの女の子とは違っていて

ボールはちゃんとしてるし、スピードもある…

部員とのキャッチボールと変わりはない

コントロールも、僕はグラブをほとんど動かすことなく取れたくらいだ

僕はおそるおそる翼のグラブに向けてボールを投げた



ポスンッ



翼の笑顔は輝きを増し、またボールを投げた


『もっと早く投げても大丈夫だよ!』


翼が言うからもう少し強く投げた

けど翼はなんなく受け止めてくれた



何度か翼の笑顔を見ながらキャッチボールをしてると

なんだか温かくなって今まで感じたことのないようなオモイが心を支配し出していた

コレいったいなんなんだろう…

少しそんなことを考えながらキャッチボールをしている間

翼はとても楽しそうにボールを受け止め、投げてくれる

あまりにも楽しそうにキャッチボールするから思わずこっちまで笑みがこぼれそうになる


言葉はいらなかった

その球からは彼女の楽しそうな感じとか感情が伝わってくるような気がした

今までのキャッチボールの中でこんな楽しく感じたことはほとんどない





《お前とは野球やりたくねぇって――――…》


ドクンッ




「はっ・・・(やばっ 力加減間違えた!!)」


過去の映像がよみがえり、思わず指先に力が入ってしまった


「翼!避けて!!」




パァァンッ!






乾いた音を立て、

翼はそのまま後ろに倒れてしまった



「翼!!!」


やってしまった

また自分から人が離れていく

怪我をさせてしまっていたら・・・

彼女は・・・


暗い感情が全身をはいずりまわっている

それを振り払うように翼のもとへと走った


「翼・・・・・」

翼の側につき、しゃがんだ瞬間

俺の顔の前が茶色くなりあの独特の匂いがする…

よくみると翼のグラブが顔の前にある


『取ったよ、ちゃんと』

「えっ?」


翼の声が聞こえて、キョトンとしているうちに

翼はグラブにおさまっているボールを見せながら

すっと上体を起こしとても嬉しそうに話しだした


『みてみて!暁くんのボール、ちゃんと受け取ったよ!
ちょっと不恰好だったけどね』


「?!!――――…」


トクン…


『暁くんの球すごいよ!重みがあって迫力もあって…きっとバッターは…
…どうしたの?暁くん』

「・・・・・・」

『心配、かけちゃった?ごめんね?』

「――――――ッッ!!」


うつむく僕の顔を心配そうな顔でのぞきこむ翼

翼が無事でホッとしたのと同時に

とても嬉しそうに話す翼に、感じたことのない感情が心の中全てを支配し…

無意識のうちに体は動いていた



『わっ!』




おもわず


翼を


抱きしめていた






「っ・・・翼…」


驚きながらも抵抗することなくおとなしく翼は抱きしめられていた


『さ・・とる…くん?』

「・・・・と」

『えっ??』

「…ありがとう・・・・翼…」


そういうと翼は少し照れたようにハニカミながら


『どういたしまして』


と言って、そっと僕の背中を撫でた



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