遥時短編
□ウグイス
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京に来て、朔のお邸において貰うようになった私達。
朔の邸はとても立派で、部屋もたくさんある。
もちろん、庭も素敵で・・・。
「あら?」
庭には弁慶さんの姿。
私は彼に歩み寄る。
「弁慶さん?何をなさって━」
「しーっ。」
るんですか?と言い切る前に止められてしまう。
その理由は・・・・・・。
「ホーホケキョ。」
「あら?ウグイスですか。」
「いけません・・・・・・静かに。ウグイスは人の姿を見つけると逃げてしまいますから。」
「すみません、私が・・・。」
「━こちらに隠れましょう。」
こちらに、と言って弁慶さんは私の手をひき、隠れる。
・・・・・・のはいいのだが、少し顔が近い気もする・・・。
・・・近くで見るとほんと綺麗な顔・・・。
男の人に綺麗っていうのも不思議な感じだけど・・・。
でもその辺の女の人より色っぽい気がするわ・・・。
「?僕の顔に何かついてますか?」
「い、いえ!?何も・・・。」
もんもんと考え込んでいたら、ついつい凝視してしまったらしい。
ハハ、恥ずかし・・・。
私は慌てて否定する。
「どうしたんですか?顔が赤いですよ。」
「な、なんでもないですから。」
本人に向かって色っぽいですね、なんて言えない。
「ふふっ。可愛らしいですね。」
「はい?」
「ウグイスの鳴き方も、まだ春が浅いでいか鳴き方がたどたどしくて。」
「・・・ウグイスがお好きなんですか。」
「ええウグイスに限らず好きなんですよ。特に、可愛らしい声で楽しませてくれる小鳥は、ね。」
・・・何か意味深・・・。
「でもウグイスの声を聞くと春だなぁって気がしますね。」
「そうですね。」
「宇治川にいた時は雪も残っていたのに。」
「ホーホケキョ。」
「そのうちあっという間に桜も咲くかもしれませんね。」
「ええ、そうですね。そうしたらお花見でも行きましょうか。」
「いいですね。お弁当持ってみんなで。」
「・・・みんなでもいいですが・・・。僕は君と二人きりというのにも興味ありますね。」
「・・・・・・。」
私はその言葉に目をパチクリ。
その様を見て弁慶さんはくすっと笑った。
やっぱり侮れない人だわ・・・。
終