大事なもの
□第二話
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傷付け、傷付けられ。
怪我を負うのは私が弱いから。
痛みなど大して気にも留めた事はない。
でも心は・・・。
「悪運強いねぇ、私も・・・。」
只今の夜錘の状況を説明すると・・・。
崖から落ちた。
夜錘は今、自分が落ちて来た処を見上げる。
木々が茂っているせいも勿論在るが、崖の上が見えないのはそれだけではない筈だ。
「良く生きてたもんだなぁ。」
我が事ながら、感心するわ・・・。
夜錘は全く他人事のように感心している。
「止血しないと・・・。」
こんな時に冷静なのは彼女の生い立ちのせいだ。
夜錘は血が滲んでしまっていた左肩部分を引き千切り、止血を施す。
その血は今だ止まる事を知らない。
「よっと。」
彼女は立ち上がる。
否、立ち上がろうとした。
「っ・・・!」
右足に激痛を感じる。
如何やら挫いたらしい。
「全く無傷・・・って訳にはいかないかぁ・・・。」
右足にも左肩同様、応急処置を施す。
「すぅ・・・・・・。」
大きく一つ深呼吸する。
向こうの方に川が在ったな・・・。
崖から落ちる際、ちゃっかり彼女は周りに目を配っていたので在る。
取り敢えずの目的地を川に定め、木を支えに立ち上がり、歩き始めた。
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