大事なもの

□第七話
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偽りの顔、偽りの声。

偽りの名前、偽りの性格。

嘘を嘘と嘘で固めた私の中の本当。



「はぁ・・・。」



一行のもとを離れ、一人森へと足を踏み込んだ夜錘。
元々此方の地形の事が全く判らない。
一人で彷徨うには無謀過ぎる。
然し彼女には一緒にいられない訳が在った。



「皆、心配してるかなぁ?」



・・・でも私がいると迷惑だろうし・・。

迷惑はかけたくない、他人の足手纏いにはなりたくない。
その想いが彼女を今動かしている。



「でもこうも当てがないと、さまよえるユダヤ人の気分だわ・・・・・・。」



立ち止まることを許されない、さまよえるユダヤ人。
今の夜錘の状況に酷似している。



「木の上でも登ってみようかしら・・・。」



彼女はヒョイと木の上へと飛び上がる。
勿論、右足を気遣いながら・・・。



「ラッキー、集落発見。」



木の上から見えたのは建物が群がる姿。
あそこに向かおうと夜錘が木を降りようとした時。



「!?」



・・・これは・・・妖気・・・!!

夜錘は妖気を感じる・・・。
葉で姿を隠すようにその場にしゃがみ込んだ。

・・・いた・・・!

夜錘の視界に入ったのは三人の妖怪。
如何やら此方には気付いていないよう。

このまま、気付かずに行ってしまって・・・。

夜錘は音を立てないよう努める。
呼吸を静め、気配を消す。



「チッ・・・。何もねぇなぁ・・・。」



少しずつ妖怪達は離れて行く。

良かった、このままいけば・・・。



「!?」



その時また夜錘は妖気を感じる。

これは・・・この気配は・・・!!



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