四面楚歌

□第三話
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あれから柿ノ木中とは幾度か練習試合を重ね。
ついに神奈川県大会地区予選を前日に控えた。



「明日かぁ・・・。」



骨を休めるのも大事だ、と云う蓮二のお言葉により、本日の練習は終了。
明日の準備を鞄に詰め込みながら私は呟いた。



「心配はいらん、明日の試合は勝って当然の試合だ。」
「って云っても私達初の公式試合だもん・・・。緊張しちゃうよ・・・。」
「大丈夫っスよ、零。この俺がちょちょいのちょいで倒してやるって。」
「俺はそれよりお前が遅刻しないか心配だな。」
「大丈夫よ蓮二、安心して。弦一郎が迎えに行ってくれるそうだから。」
「げっ・・・。」
「ほう・・・、なら安心だな。」



げっとは何事だ〜!!と叫ぶ弦一郎と逃げる赤也君。
もう流石に見慣れて、今では零も笑って見ている。



「俺も緊張して手が震えるのぅ・・・。」



慶〜と猫なで声を出すのは雅治。
顔に似合わないと思ったのは私だけではない筈だ。



「ほれ。」



そう云ってわざとらしく震える手を・・・・・・。
何故か私の胸の上へと持って来る雅治。



「・・・・・・。」



さて、何処から突っ込んだものか・・・。



「・・・・・・雅治君ってばだいた〜ん・・・。」
「つかセクハラだろぃ。」



雅治のそんな行動に頬を赤くするのは私ではなく皆。
特に酷かったのは弦一郎。
耳まで真っ赤に染めて、口をパクパクさせていた。



「・・・・・・私、空手四段なの。明日、テニス出来なくなっても知らないわよ?」



それだけ云って後は無言で雅治の目を見続ける。
此奴は案外こう云う方が堪えるのだと、一緒にいるようになってから判った。



「・・・・・・すまん。」



雅治の素直な謝罪に感嘆する皆。



「・・・最近、慶が幸村に似てきた気がするんじゃが、気のせいかの?」
「・・・気のせいではないですよ、恐らく。」



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