四面楚歌

□第五話
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早いもので今日から関東大会。
第一回戦は銀華と云う学校だった。
蓮二が事前にデータを取ろうとしたんだけど、試合が不戦ばかりだった為データが取れなかったらしい。
緊張しながら臨んだダブルス2の試合。
・・・・・・の筈だったんだけど。
整列して挨拶をする時点で『腹痛いんで棄権します!』と全員で大合唱。
私達は拍子抜け、皆は不完全燃焼で不機嫌。



「あ゛〜、何かすんげぇつまんねー。」
「データがなかっただけに、予想外だったな。」
「在っても予想は難しかった気がしますが・・・。」
「無駄に喉渇いたのぅ・・・。」



そう云ってポケットの中をごそごそと探る雅治。
恐らく自販機で買う為にお金を探しているのだろう。
今度は鞄の中を探る雅治。




「・・・・・・。」



やっと財布を探し当てた雅治は中身を見て固まった。



「すまんが貸してくれんかの?」



私に向かって手を出す雅治。
如何やら帰りの交通費しか残っていなかったらしい。



「良いわよ、はい。」



私は仕方ないわね、と云いながら彼の上に150円置いた。



「くれる?」
「嫌。」
「貸して?」
「良いわよ。」
「くれる?」
「嫌。」
「貸して?」
「良いわよ。」
「くれる?」
「嫌。」
「デートする?」
「嫌。」
「「「「「「「・・・・・・・。」」」」」」



私と雅治とのやり取りを見て沈黙。



「さっすがだなぁ。」



ブン太に妙に感心されて、蓮二はまた何かノートに書き込んでるし。



「引っかからんのぉ。」
「当然でしょ?」
「でも絶対零だったら引っかかってたっスよね?」
「んもう!赤也!!」
「莫迦やってないで行くぞ。」



そう云ったのは弦一郎。
彼の言葉に首を傾げる零。



「行くぞって何処へ?試合は終わったでしょ?」
「偵察だ。」
「偵察?」



勝ち進めば当たる、要注意人物らしい。
常勝立海と云う異名を取る彼らのこの警戒の仕様。
一体どんな人なのかしら?



「俺らは下りるぜよ。」



そう云ったのは雅治。



「ちょっと考える事が在っての。柳生と一緒に残るき。」
「俺らもぱ〜す。」



今度はブン太。



「あんな眼鏡に興味ないし。」
「そうか。」



まあ、お前らはダブルスだから構わないだろうと蓮二。
つまりシングルスプレーヤーで眼鏡って事?



「二人は如何する?」
「赤也が行くなら私も行くよ。」



思い当たる節が一人。
浮かんだのは従弟の姿。



「私も。・・・・・・気になるから。」



色んな意味で。



「赤也・・・。」
「何スか、仁王先輩?」
「慶に悪い虫が付かんよう、頼んだぜよ。」
「了解っス。」
「・・・もしもん時は覚悟しんしゃい。」
「・・・・・・了解っス。」



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