四面楚歌

□第六話
1ページ/4ページ




「やるじゃねーのよ手塚『そんな腕』で。」
「!?」



跡部と云うその男の言葉一つで、騒がしかった空気が一瞬にして静まる。
如何云う事だと皆が首を傾げ、話が判らないと云う顔をする。
そんな空気に更に追い撃ちをかけるように、跡部は国光に向かって云った。



「あん?その左腕、痛めてるんだろ?なあ手塚・・・。」



なあ、と問い掛けられても国光は何も答えない。
答えたのは・・・。



「いやっ。手塚の『ヒジ』はもう完治してるはずっ!!」
「大石、莫迦!!」
「なる程。ヒジな訳ね!」



大石は顔を青くし、私は頭を抱える。
痛めていたからと云って試合が止まる訳じゃない。
再び始まったラリーは、怪我などしていたようには見えない。



「緒方・・・。お前は知っていたんだな?」
「ええ・・・。」
「説明しろ。手塚に・・・、いやお前達に何が在った?」



私は深く長く息を吐いた。
溜息と云う訳ではない、ただ話すのに少し覚悟がいるだけ。



「一年の時。国光は既に青学の誰よりも強かった。そう、当時の部長よりさえも。」



その時の青学テニス部は都大会止まりで、名門の名が消えかけていた。
だからと云う訳ではないけれど、国光は決めていた。
自分達の代には必ず全国へ行くと。



「見て、今国光は左でラケットを握っているでしょう?」



それは対戦相手が同等の実力だから。



次→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ