四面楚歌

□第十話
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「ベスト4・・・、決まったぞ。」



蓮二は一枚の紙を見ながら、私達の前に立った。
ベスト4、つまり全国大会への切符。
それを早々に決めてしまった私達は、他の三つの学校の名前を待った。
優勝するのは、立海。
それでも警戒は怠らない。



「青学、六角、そして不動峰。」
「不動峰とはあの橘君が転校した・・・。」
「山吹じゃなかったのね・・・。」



仁は如何やらもうテニス部を辞めてしまったらしい。
彼がいたならば、結果は変わっていただろうか。



「よぅ、会いに来てやったぜ、慶。」
「何の用じゃ。」



私が答えるよりも早く、私の前に立ち塞がるのは雅治。
雅治は突然現れた男、跡部を睨み上げた。



「お前じゃねぇよ。俺は慶に会いに来たんだ。」
「慶は俺の彼女じゃ。」
「あーん?慶は俺の婚約者だぜ?」
「無理矢理じゃろうが。」



何故か火花を飛ばし合う雅治と跡部。
私はそんな二人に呆れて溜息しか出ない。



「慶・・・。」
「仁?」
「鬱陶しいのがまた・・・。」
「慶に話が在る。」
「慶にそんな暇はなか。」



・・・雅治がやきもち焼きなのは知ってたけど。
嬉しい反面、ちょっと複雑。
これじゃあ私の友人関係が成り立たない。



「ねぇ雅治。跡部は仕事上の都合だし、仁は親友だし、そう目くじら立てなくても・・・。」
「お前さん、それ本気で云ってるんかの?」
「は?」



私は首を傾げた。
全く雅治の云っている意味が判らなかったからだ。
その時、私の携帯が震えた。
画面を見ると其処にはコーリングと共に国光の文字。



「もしもし?国光?」



私が電話に出た瞬間、前の三人が此方を睨んだ。



「『慶、少し話が在るんだが、いいか?』」
「別に構わないんだけど・・・。」



何だか訳の判らない雰囲気の三人を見つめながら私は頷いた。



「『こんな事、電話で云うか如何かは迷ったんだが・・・。』」
「うん?」
「お前、俺がただの仕事上の都合で婚約したと思ってんのか?」
「慶。俺は一年前からずっとお前の事・・・。」

「「『好きだ。」」』
「ん?」



今確かに声は三種類聞こえた。
でも聞き取れた単語は一つきり。



「慶は俺のもんじゃ!!」



雅治が私の携帯を取り上げる。
そのまま国光に何か怒鳴りつけているようだ。



「・・・私さ、もしかして思いっ切り四角形の中心に居る?」
「確実にな。」
「って云うか今気付いたの?慶。」



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