四面楚歌

□第十四話
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「うぉっ!?すっかり真っ暗じゃん。」
「ちょっと夢中になり過ぎましたね。」



すっかり日も沈み、建物の隙間から星の輝きが漏れる頃。
丸井と切原はゲームセンターを後にした。
二人はすっかりご満悦の様子。
余程たっぷりとゲームに勤しんだと見える。



「関東大会が終わって一段落したってのに。」
「副部長達きつ過ぎっスよね。」
「た、助けてぇ。」
「「あ?」」



息抜きも必要だよな、と笑い合う二人の背中に女性の悲痛な声。
思わず振り返った。



「きゃあぁ!!」



ビルとビルとの狭間に夜目にもはっきり判る金髪の女性。
そしてその後ろにはギラギラと瞳を輝かせた、恐らく男性。
姿ははっきりとは二人からは見えない。
然し本能的に悟った。
此奴はヤバい、と。



「赤也は女の子の方頼む。」
「っス。」



丸井は女性の前に出て、其奴を睨み付ける。
幸いテニスのお陰で動体視力には自信が在る。
拳銃でもない限りは大抵の攻撃は避けれる筈だ。



「大丈夫っスか?」
「・・・っ。」



余程恐ろしかったのか女性は声が出ないらしく、必死に首を縦に振った。



「お前、一体彼女に何の怨みが在るか知らないが、暴力はよくないぜぃ?」
「・・・・・・ろう。」
「は?」



ハァハァと荒い息で丸井は相手が男だと確信した。



「金狼は何処だぁ!!」



その叫びはまるで狼の遠吠えのように。
暗い路地裏に木霊した。



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