四面楚歌

□第十六話
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「はぁ・・・。亜久津先輩、ちゃんと病院のご飯食べたんでしょうか。」



病院の面接時間が終わり、帰宅途中の壇。
日は傾き始め、家路に急ぐ人々が彼の脇を通り過ぎて行く。
小さな彼はやはり簡単に人に埋もれて行く。



「やっぱり優紀ちゃんには知らせておいた方が・・・。」



優紀ちゃん、亜久津の母親。
亜久津はしきりに知らせるなと云っていたが、そうもいかないだろうと。
息子に何か在って知らずにいれば、ショックを受けるのは彼女の方だ。
口では何と云いつつも心配はかけたくはない亜久津。



「やっぱり亜久津先輩の事を報告するです!!」
「・・・・・・亜久津・・・だと?」
「っ!?」



地を這うような低い声。
壇の背中に悪寒が走った。
それはそう、初めて亜久津と出会った時のような。

恐る恐る振り返る。
振り返っては駄目だと、心に唱えながら。



「お前、亜久津と知り合いか?」
「あっ、あっ・・・・・・。」



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