Entfernug
□PHASE−17
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日曜日。
俺とレモーリンは二人でエリカに乗っていた。
運転はレモーリン。
男としてどうかと思うが、目的地が判らないから手っ取り早くはある。
そう、俺は今日の目的地を知らない。
恐らく敢えて云わないのだろうから俺も聞かないでおく。
「ここからは歩きになるんだ。」
降りたのは何処かの山の麓で。
ただ肩を並べて歩き出す。
「こうしてるとデートみたいだね。」
みたい、ね。
って事はデートをしている気はないって事か。
山の中二人きり、周りに人の気配はなし。
・・・この状況をレモーリンは判っているのだろうか。
「だったら手でも繋ぐか?」
「うん!」
一回りほど小さいその手はすっぽり掌に収まる。
てっきり温かいと思ったその手は、ひんやり冷たかった。
・・・緊張、しているのか?
「えへへ。」
「何だ、急に。」
「うーうん。近くなったなぁって思って。」
何が、と首を傾げるまでもない。
「物理的な距離もだけど、心の距離も。・・・街で会った時の事覚えてる?私がアスランにぶつかっちゃって・・・。」
よく覚えている。
彼女があまりにも大荷物を抱えていたので思わず声をかけてしまった。
「あの時優しいのに距離を感じる人だなぁ、って不思議に思った。明らかに警戒しているのに親切にしてくれるんだもん、びっくりしたよ。」
それから気分が悪くなった俺の額にレモーリンは手を当てた。
あの時の吐き気が治まっていく感覚は今でもはっきりしている。
「あの時はこんなに仲良くなれるなんて思わなかった。」
「俺もだよ。」
出来ればもっと仲良くなりたいんだけどな。
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