Entfernug

□PHASE−2
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「あれ?アスランさんじゃないですか?」



何が目的と云う訳でもなく、商店街をブラブラと歩いていると、声をかけられる。
振り返ると其処には・・・、袋。
いや、大量の買い物袋を持った・・・・・・。



「えっと・・・、レモーリン、さん?」



ダッドさんの店で会った少女。
彼女は抱えている袋の横から顔を覗かせる。



「はい、覚えていて下さって嬉しいです。」



にっこり彼女は微笑むが、俺は今すぐその場を離れたい衝動に駆られる。
・・・・・・彼女が如何、と云う訳ではない。



「後、レモーリンで構いませんよぉ!?」



彼女の声が裏返って、よたよたと足をふら付かせる。
それもその筈、彼女の腕には大量の買い物袋。
女の子一人が運ぶにはきつい量だ。



「・・・・・・半分持とうか・・・?」



余りにもフラフラしているので、俺は思わずそう云ってしまった。
云った事を少し後悔する。
でも人としてこれを放っておくのは如何かと思うし・・・。



「すみません・・・、お客様なのに・・・。」



彼女とは少し距離を取って、歩く。
彼女はそんな事は気付いていないのか、気にしていないのか、何も云っては来ない。



「今度からは自分で持てる分を考えます。」
「その方が良いね・・・。」



でも私、買える時にバァーって買っちゃいたい派なんですよ。
と何故か力説し始める。
・・・・・・きっと彼女自身は良い人なんだと思う。
でも女の人、と云うだけで如何しても・・・。



「あ、そだ。荷物持って貰ったお礼にうちでご飯食べて行きませんか?これでも料理には自信が在って・・・。」
「・・・ごほっ。」



ふいに込み上げてきた嘔吐感。
俺は思わずその場にしゃがみ込んだ。



「アスランさん!?」



近寄らないでくれ・・・。
そう思っても彼女に伝わる筈もなく、また云える訳もなく。



「大丈夫ですか?顔色悪いですよ?」
「あ、いや・・・。」



・・・気持ち悪い・・・。
嫌だ・・・、怖い・・・。



「ちょっと失礼しますね。」



同じく目の前にしゃがみ込んでいた彼女が、俺の額に手を伸ばす。
ビクッ、と俺の体があからさまに震える。



『そっち持って。』
『口、塞いじゃう?』
『大丈夫、気持ち良くさせてあげるから。』



「あ・・・。」



記憶がフラッシュバックする。
やばい・・・、本当に吐きそうだ。
往来の道のど真ん中。
些か拙い気がするけど、自分では如何にもならない。



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