Entfernug

□PHASE−5
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「は、初めまして・・・。」



丁寧に父に礼をしている彼女は傍目から見ても緊張していた。
身体の前で組んだ手は僅かに震えていて。
頭を下げたまま上げる事が出来ないのか、そのまま視線を彷徨わせている。



「ふ〜む・・・。」



父は顎に手を添えて、品定めの様に彼女を見る。
そりゃあ、居心地悪くもなるだろうな・・・。
俺は丸まっている彼女の肩を叩いた。



「レモーリンさん、そんなに緊張しないで。父上も余り見つめ過ぎるのはよく在りませんよ。」
「レモーリンさん・・・、と云うのか・・・。」
「は、はいぃ!!」



顔を上げるたレモーリンさんの顔は強張っていて。
父はその瞳を面白そうに見ながら彼女の肩を掴んだ。



「いっや〜、美人さんだね〜。」
「・・・・・・は?」



父の反応が意外だったのか、固まってしまうレモーリンさん。
俺は一人溜息をついた。



「いやいや、アスランが連れて来たと云うだけでも驚きなのに、まさかこんなに可愛らしいとは・・・。想像以上だよ、うん。」
「では特待生の話、認めて頂けますね?」
「勿論。レモーリンさん、アスランの事末永く宜しく頼むよ。」
「え?よ?あ!こ!」
「父上、嫁入りじゃないんですから・・・。」
「アスランも中々面食いだな。」
「違います。」



父の事だ、そんな事を云い出すと予想はしていたが・・・。
幸い彼女の耳には父の言葉の半分も届いてないだろう。



「ではこれで失礼します。」
「ああ、学園内を案内してやれ。」
「云われずともそうしますよ。」



用が済んだらこんな部屋にいる意味はない。
俺は固まり続けているレモーリンさんの背中をドアまで押し進める。
ぎこちなくお辞儀をした彼女を俺は褒めてあげたかった。
あんな男、頭を下げる義理などないのに・・・。
扉を閉める直前、チラッと父に目線を送る。
父の口は静かにこう呟いていた。



「あれが、ダッドの・・・。カインの娘か・・・。」



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