Entfernug

□PHASE−10
1ページ/2ページ




「気分は如何?」
「大丈夫・・・。」
「でもまだ顔色が悪いよ。」
「・・・握っていてくれたんだな・・・。」
「え?あ・・・。」



俺の左手は彼女の手に包まれていた。
さっき感じた暖かさはこれだったんだ、と。
今度は俺からも彼女の手を握る。



「何だか魘されているみたいだったから・・・。」
「有難う・・・。」



顔を真っ赤にして俯いたレモーリン。
然し俯いても耳まで真っ赤だから意味がない。



「でも何か在ったの?急に倒れるなんて・・・。」
「・・・少し長い話になるけど、聞いてくれるか?」



勿論、と云うようにレモーリンは微笑んだ。



「十年ほど前の話だ・・・。」



十年前、俺は・・・・・・。



強姦に在った。



俺は男だから強姦と云う表現は正しくないかもしれないが、兎に角。
襲われたんだ、女の人に。

名前も顔も知らない女性。
でも向こうは明らかに俺を知っていた。
俺、と云う身分も。

幼い俺は最初何の事か判らなかった。
いきなり寝ころばされて服を脱がされる。
嫌だと抵抗すると頬を叩かれた。
痛みと恐怖に叫ぶとガムテープで口を覆われた。
四肢を抑えられ、自分しか触れられた事がない場所に触れられる。



「もういい!もういいよ!」



その言葉と同時に抱きしめられた。
彼女の肩は震え、嗚咽がこぼれていた。



「レモーリン・・・?」
「もう充分だから・・・。だからそんな辛そうな顔しないで・・・。」
「泣いてる・・・?」



レモーリンは涙をいっぱいに溜めた瞳で俺を見た。



「ごめ・・・、でも止まらないの・・・。」
「レモーリン・・・、有難う。」



彼女の頭を抱き、その髪に指を通した。
落ち着くように、泣き止むように。



「ごめん、君を泣かす気じゃなかったんだ。ただ知ってもらいたくて・・・。」
「私もなの・・・。」
「え?」
「私も同じなの・・・。」



レモーリンの言葉の意味が判らずに首を傾げた。
すると彼女は涙を拭いながら、うっすら笑みを浮かべた。



次→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ