Entfernug

□PHASE−14
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寒い・・・・・・。

まるで雪原を歩いているみたいに凍えそう。

怖い、怖いよ!

何か判らないけど、迫って来る気がする。

逃げなきゃ!

ふと右手に力を感じた。
そろそろと目を開けると、心配そうに揺れるエメラルドの瞳と目が合った。



「アスラン・・・?」
「おはよう。」



私の右手をしっかり握っているのはアスランの手。
さっきのは夢で此処が現実なんだと強く感じた。



「いつかと逆になっちゃったね。」
「そうだな。」



空いている方の手で頭を撫でてくれる。
それが気持ちよくて、でもくすぐったくって目を伏せる。



「此処は・・・?」
「病院だ。何があったかは・・・覚えてるよな?」
「うん・・・。」



音楽室に閉じ込められた。
それだけじゃない、殺されそうになったんだ。



「他の皆は・・・。」
「大丈夫、違う病室にいるよ。」
「そっか。」



よかった。
正直途中から意識が朦朧としていてよく覚えていない。
ただ気を失う前にもあのエメラルドを見た事だけは覚えている。



「有り難うアスラン、助けてくれて。」
「いいや、君が無事でよかったよ。」



柔らかい微笑みが私を包んでくれる。
それだけで凄く安心した。



「イチャイチャの最中申し訳ないが・・・。」
「父上!?」



ドア付近に立っていたのはアスランのお父様。
慌てて私達は繋いでいた手を離した。



「気分はどうかな?レモーリンさん。」
「大丈夫です。」
「今回は学園側の怠慢が招いたものだ、すまなかった。」
「そんな、頭を上げて下さい!」
「犯人は今全力を上げて追ってはいるが・・・。」



言葉尻が下がった事で悟った。
まだ何の情報も得られていないのだと。



「これは君のパソコンだね?」
「はい、そうです。」
「事件直後にメールを受信している。悪いと思ったが、開かせて貰った。」
「それは構いませんけど。」



メールは登録していないアドレスで。
首を傾げる私を余所に、理事長はメールを開いた。



「!!??」



『楽しんでくれたかい?』



メール内容はその一文のみ。
題名も差出人の名前もない。
でもその無機質な文字を見た瞬間、ぞくっと背中に悪寒が走った。



「タイミング的に今回の事件と無関係とは思えない。・・・君には差出人に心当たりがあるんじゃないかな?」



理事長の声が遠い。
私は震えそうになる肩を抱いた。



「レモーリン!」



心当たり、と云うよりも思い浮かんだ顔はただ一つ。



「・・・・・・義父、だと思います。」



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