なんでも屋

□第六話
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よく晴れた日曜日。
刹那は夕飯の買い物にデパートまで足を延ばしていた。
そこで見かけた見覚えのある後ろ姿に、思わず声をかける。



「あれ?西園寺警部?」
「君か・・・。」



気怠げに振り返った西園寺。
いつものビシッと決められたスーツは、今日はラフなジーンズへと姿を変えている。



「今日はお休みですか?」
「・・・まぁな。」



つい先日、あれほど辛く当たったのに、変わった少女だと西園寺は思う。
まるでそんな事実はなかったと云うような屈託のない笑顔。
改めて外見を検証してみても、とても頭が切れるとは思えない。



「ご自分でお料理されるんですか?」
「一人暮らしだからな。」



普段忙しさにかまけて外食や買った物が多くなりがちになる。
だからせめて休みの日ぐらいは作らなければ、と。



「ご立派ですね。」



世辞でなく本気でそう云う刹那に西園寺の方が居たたまれない。
実際の所どう対応していいのか、何を云ったらよいのか判らないのだ。



「今度宜しければうちにも遊びに来て下さいね。ご馳走しますよ。」



ああ。
西園寺がそう答えようとした時だった。
耳を裂くような爆音が響いたのは。

音は一度きり。
しかし客達の不安を煽るには十分だ。



「・・・今のは一体・・・。」



音のした方向は判らない。
辺りを見渡すと砂塵が見えた。
どちらともなくそれに向かって走り出す。
すると鼻についたのは火薬の香り。



「エスカレーターが・・・。」



二人がいたのは地下一階の食料品売場。
一階とを結ぶエスカレーターは無惨にも半分より下は既に瓦礫と化していた。



「っ・・・。」
「大丈夫ですか!?」
「足が・・・。」
「ごほっ、ごほっ。」



エスカレーターの周りには見える範囲で三人倒れ込んでいる。



「君はここを!俺はエレベーターを見てくる!」
「はい!」



西園寺は宣言通りエレベーターに向かって走り出した。
そこには既に幾人か駆けつけており、直ぐに異常が判った。



「くそっ!どうして動かないんだ!!」



連打されるボタン。
しかしそのランプは付くことはなく、動く気配がない。
その隣にある非常階段への扉も、ノブを回しても体当たりしても開こうとはしなかった。



(おいおい冗談だろ・・・これって・・・。)



閉じ込められた?

そんな嫌な予感が西園寺の頭を過ぎった。

このデパートは時々利用する。
だから大凡の物の配置、出入り口は知っているつもりだ。



「どうでした?」



刹那が居る所に戻ると彼女を中心に人が集まっていた。
エスカレーターの周りには近付かないようテープのバリケード。
それはよくよく見ればこのデパート名が記載されたレジに備わっている購入済みテープだった。



「まずいことになったぞ・・・。」



あの後スイングドアを潜り従業員用のエレベーターと階段も確認した。
しかし状況は店内と同じ、うんともすんとも反応はない。



「・・・・・・閉じ込められた。」



込み合う時間帯ではなかったとは云え、ここには沢山の人が居た。
客だけではなく働く人々も。



「とにかく皆さんを一カ所に集めましょう。怪我人は私の所へ。」



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