地味と云う名の私の日常

□第二話
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「はぁ〜・・・。」



人知れず溜息がこぼれる。
重く、長い溜息が。

・・・今日も学校か・・・。

そう思うだけでまた溜息が出る。
別に学校自体が嫌なんじゃない。
勉強だって大変だけど知識が身に付くと云う点では楽しみも在るし。
でも・・・・・・。



「はぁ・・・。」



やはり口から漏れるのは溜息。
昨日まではこんなに憂鬱にならなかった。
そう、昨日事件が起こったのだ。
私の気分を滅入れさせる劇的な出来事が。



席替え。



その行為自体は問題なかった。
然し結果は最悪と云っていいものを招いてしまった。



「面倒だなぁ・・・。」



まだ何か面倒な事が始まった訳ではないけれど、嫌な予感がひしひしとする。



「・・・・・・。」



鏡に映る自分と目を合わせる。
其処には何処にでもいそうな、普通の女の子。

でもこれじゃあ駄目なんだと、近くに置いて在った櫛で髪を梳かし始める。
毛先から、根本へと丁寧に丁寧に。

ふと、髪を梳く手を止めた。
部屋の照明に僅かに反射して光る根本。

別に生え際がハゲてる、と云う訳じゃなく。
生え際が金髪になって来ている。

私は父がイギリス人で、日本人の母との間に生まれた所謂ハーフ。
父の遺伝が濃いせいか、顔は東洋風でも、髪は金、瞳は緑と西洋風。

以前にも述べたと思いますが、私はとある事情で地味に暮らしています。
だから、金の髪は黒に染め、目にはカラコンを嵌めています。
染めている為、時間が経てば髪も生えて来る。
つまり、生え際が金髪になる訳で・・・。

地味を貫く為にはまめに染める必要が訳なのです。



私は櫛と共に常備して在るスプレー缶を握る。
世の中便利なもので、一時的に髪の色を黒くする商品が在るのだ。

生え際にそれを当てて、髪に色を馴染ませてから左右均等に分ける。
其処から更に三等分。
最初は不慣れだった編むと云う動作も今はお手のもの。



「よし。」



もう一度鏡の中の自分と目を合わせる。

鏡に映った自分は、黒髪の三つ編み、眼鏡をかけたら、何処から如何見たって地味子。



「さてと、今日も学校へ行きますか。」



わざと意識的に呟いた。
そうしないとまた挫けてしまいそうだから。

とにかく今私が願うのは平穏な学生生活。
そして・・・。
早々の席替えだった。



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