地味と云う名の私の日常

□第二話と第三話
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8時28分。

俺達は何時ものように教室に入る。
半からHRが始まるのだが、俺様達が入るのは何時もギリギリ。
時間に余裕を持って行動するのが常だが、早めに来ると回りの女子が何かと煩い為、こんな時間になる。

ガラッ、とドアを開けると一気に周りが騒ぎ立つ。
皆が皆、俺達の方へ視線をやる。

・・・・・・ただ一人を除いては・・・。



昨日、俺達のクラスは席替えをした。
テニス部レギュラーが結構固まったのは良いんだが、近くに西賀の席も在った。
西賀と云うのは今俺様の腕にしがみ付いてる女。
何時も「跡部君〜。」とか云って猫なで声を出してやがる。
香水をがんがん付けてオマケに厚化粧、臭ぇったらねぇ・・・。
自分の席に腰をかけようとしたら、渋々西賀も離れて行った。
宍戸の隣の席の西賀は、座ってからある一点の処を睨み付けている。



そいつは俺の前の席、縁川俊だ。
そう、唯一俺達が教室に入っても何の反応も示さない女。
見た目は何の変哲のない只の女。
いや、三つ編みに眼鏡なんてしてやがるから地味な女だ。

それでも何故だか俺はこの女が気になる。
別に好きとかそう云う類の話じゃねぇ。
何となく俺達と似ている気がしてなんねぇだけだ・・・。

何かを隠しているような、何かを抑えているような・・・。
それでいて何かを偽っているような、そんな気がしてならねぇ。

HRが終わって先生が出て行った後、縁川も立ち上がる。
今まで休み時間にはトイレに立つくらいしかしなかったので、顔には出さないが少し驚いた。
縁川が立った瞬間、西賀がすかさずその席に座る。
休み時間の度にその光景が目に入った。

恐らく縁川も西賀の視線に気付いているんだろう。
っとなると席を立たせているのは俺達のせいだ。
周りの上目遣いで見てくる女共と違って、少し罪悪感を覚えた。

俺様の席の近くになった事で、西賀に何もされなければ良いが・・・。

珍しく女の安否を気遣う。
俺らしくねぇ・・・。
西賀が俺達に近寄って来る女共に何かしているのは知っている。
だからと云って別に止める気もなかった。
西賀の存在一つ我慢すれば他の女は見ているだけだからだ。



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