テニスとテニス

□第三話
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授業は宍戸に教科書を見せて貰って何とか乗り切り、昼休みを迎えた俺に届いたメール。



どどどど如何しよう路瑠!!
まじで生、忍向だよ〜!!



・・・・・・云わずとも判る、菜央からで在る。

へ〜、あのダブルスコンビと一緒になったのか。
確実に菜央の(脳内妄想の)餌食だな。

俺は宍戸と一緒だったよ、っと。

それだけ打って俺は送信ボタンを押す。



「誰にメールしてんだ?」



送信し終わると同時に、宍戸が話しかけて来た。



「従姉にな、一緒に転校して来たんだよ。」



一応、俺と菜央の関係は従姉弟同士、と云う事になっている。
一緒に住んでる訳だから、その為の理由付け。
実際はちっとも繋がっていないのだが。



「そーいや、お前飯如何すんだ?」
「ん?ああ、一応弁当は持って来てるんだけどな。」



俺は自分の鞄の中から、二つ弁当箱を取り出した。



「・・・二つ?」
「従姉の分だよ、あいつに持たすとどっかに置き忘れそうだったから、俺が持って来たんだ。」
「へぇ〜。」
「だからその従姉殿を迎えに行かなきゃいけねぇんだよ、7組まで。」
「7組・・・。」



7組、と云う単語を聞いた瞬間、宍戸の顔が歪んだ。



「?如何かしたのか?」
「いや・・・別に何でもねぇ。」
「そうか?」



いまいち釈然とはしなかったが、それ以上追求はしなかった。
誰にでも聞かれたくない物事は在るものだ。



「気にすんな、じゃ行くぞ。」
「へ?」



俺は思わず間抜けな声を発する。



「何だよ?」
「いや・・・、一緒に来てくれるのか?」
「7組の場所判んのかよ?」
「や・・・、正直判んねぇ。」
「案内してやるよ。」



そう云って宍戸は自分の弁当を持つ。



「・・・・・・。」



俺はその様をずっと見つめていた。



「んだよ?」
「いや、サンキュ。お前って良い奴だよな。」
「なっ!?ほ、褒めても何も出ねぇぞ。」
「ははは。」



大の男を可愛いと思ってしまった。
やっぱ宍戸と一緒ってラッキーだったかも。



廊下に出ると、何故か周りがザワザワと騒がしい。
ひそひそこっちを向いて、話している。



「・・・・・・宍戸って目立つのな。」



俺は宍戸を見上げながら云った。



「・・・目立ってるのはお前だよ。」



宍戸の言葉は俺の耳に入らなかった。



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