四面楚歌

□第二話
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「今日は宜しく頼む。」
「此方こそ。」



と云う訳で、赤也君抜きで始まった練習試合。
零は彼の勇姿が拝めなくて残念そうだ。
精市がいないから、代わりに弦一郎が向こうの部長と握手・・・って。



「・・・お前、緒方か?」
「あら、クッキーじゃない。お久し振り。」
「そのあだ名止めろ!」



そうか、柿ノ木って何処かで聞いた事が在ると思ったら、此奴の学校か。
九鬼貴一、故にクッキー。



「またまた、意地張っちゃって。ほ〜ら、取って来〜い。」



手近に在ったテニスボールを投げる。



「わお〜ん・・・ってアホか!!」



飛びついたくせに・・・。
でもノリツッコミとはやるわね・・・。



「慶、知り合い?」
「不本意ながらね。」
「不本意ってお前な・・・。」



クッキーとは一年の時に知り合った。
やたら私の従弟殿に突っかかって来ていたので、何時の間にか覚えてしまったのだ。



「転校したとは聞いていたが、立海に入ったのか。そのせいか?随分雰囲気変わったじゃねぇか。」
「まあね。クッキーには関係ない話だけど。」
「てめぇ・・・、相変わらず可愛くないな。」
「貴方に可愛いなんて思われたくないわよ。」



ああ云えばこう返す。
私に口で勝とうなんて早いわよクッキー。



「ちょいと柿ノ木の部長さん。俺の可愛い彼女と気安く話さんで欲しいのぅ。」
「雅治。」



雅治が私を後ろから抱き締める。
まるで渡さない、とでも云うように。



「な、彼女!?緒方、本当なのか!?」
「本当よ。」
「な・・・。」



驚いて口を開いたまま、灰になっていくクッキー。



「?」
「慶さんはご自分の事には疎いようですね。」
「・・・如何云う意味よ、比呂士。」
「いえ、何でも。」



比呂士が意味在り気に眼鏡を上げるが、それ以上は何も云わない。



「お、お前、あいつは・・・、従弟は如何したんだよ!?」
「如何して其処で従弟が出てくるの?」
「あ、いや、何でもない・・・。」



お前もか・・・。
如何して男ってこう歯切れが悪い事ばっかするのかしら?



「とにかく、練習試合を始めよう。」
「くっそ〜仁王!!お前にだけは負けねぇからな!!」



クッキーが雅治に向かって指を向ける。
・・・・・・?



「残念じゃのぅ、俺はダブルス専門なんじゃ。」
「ぐっ・・・。」



因みにクッキーは根っからのシングルスプレーヤーです。



「ちくしょぉぉぉぉぉおおお!!」

「・・・・・・何が?」
「慶は知らんで良いんじゃ。」



結局練習試合は立海の全勝。
赤也君が来たのは・・・・・・。



「すんませ〜ん、遅れました。」
「遅れましたじゃないわ、バカモーーン!!」



茜色に染まった空に弦一郎の裏拳の音がよく響いた。




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