四面楚歌

□第九話
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静かな空間にポツリと呟かれた従弟の名。
私は意味が判らず首を傾げた。



「・・・跡部に亜久津・・・。」
「ああ成程。嫉妬してたって訳ね?」
「悪いか?」



冗談だったのに・・・そう真顔で返されると・・・。
こっちだって何て云ったら良いか判らない。



「お前さんは俺のじゃろ?」



普段遠回しな云い方しかしないクセに、こう云う時だけ雄弁な彼。
これだけストレートに云われたら私だって照れる。



「私の恋人は貴方よ。でも私にも交友関係が在る事も判って?」



約一名、跡部だけはちょっと違うけどまぁ置いておく。



「判っとるつもりじゃ。でもおっつかん・・・。」
「好きよ雅治。貴方が一番。」
「慶・・・。」



近付いて来る雅治の顔。
閉じようとした私の目に入ったのは時計。



「あ!いっけない!?」



ベチっといい音がした。
雅治が顔を押さえているが気に留められない。



「私これから見送りに行くんだった。今日はもう帰るわね!」



鞄を持ち、脇目も振らず部室を走り出る。

やっばいな〜仕方ない、タクシー拾うか。

校門を出て直ぐの大通りで、私は大きく手を上げた。
残された雅治は・・・・・・。



「おい、慶の奴何処へ走ってったんだ・・・?」



走って行った私を見て、ジャッカルが雅治に尋ねる。
然し彼は瞬時にそれを後悔した。
だって其処には先程以上に殺気を放っている雅治がいたのだから。



「ジャッカル・・・俺が球出ししてやるぜよ。」
「い、いや・・・えん「遠慮はいらんぜよ。チームメイトじゃろ?」・・・・・・。」



普段滅多に浮かべない彼の満面の笑みに、ジャッカルは凍りつくしかない。
腕を引かれるまま地獄(テニスコート)へと付いて行く。



「・・・・・・止めなくて良いんですか?」
「怪我さえしなければ構わんだろう。」
「・・・そう云う問題っスかねぇ。」
「なら代わって差し上げますか?」
「それこそ遠慮するっス・・・。」



ジャッカルの悲鳴を合図に他のメンバーも練習を再開したとか。



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