Entfernug

□PHASE−3
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三人で廊下を歩き始めると妙に視線を集める。
入学した当初は戸惑いもしたけど、もう随分と慣れた。
ただ遠くから何事かを囁かれるのなら大丈夫。
・・・・・・近付いてさえ来なければ・・・・・・。



「そーそー、アスラン。今度の課題の奴もうやってる?」
「ああ、少しずつ、暇な時にな。」
「げー、俺まだ何もしてねぇ!」
「あの・・・・・・。」



控えめにかけられた声に俺は肩を震わす。
その声が男にはない高さを持っていたからだ。
振り返るとやはりそれは女の子が発したもので。
格好悪いとは思いつつも、ミゲルとラスティの背に隠れた。



「あ〜?俺達に何か用?」



ラスティは面倒臭そうにそう云う。
二人は俺が女性恐怖症なのを知っている。
知らないのは同期以外や女の子。
俺の父がSEED学園の理事長を務めているせいも在って、俺は自分で思っているよりこの学園では有名人らしい。



「あの・・・、ザラさんに・・・。」



差し出されたのは綺麗にラッピングされたクッキー。
彼女は震える手でそれを此方へと差し出す。
でも震えているのは此方も同じ。

・・・・・・気持ち悪い。

震えている彼女に何も脅える要素はないのに、俺の体は勝手に反応する。



「・・・ごめん、俺、甘いものは苦手なんだ・・・。」
「あ、これ、その、甘さ控えめで・・・。」



やっとの事で言葉を搾り出したのに、意外にも食い下がる女の子。

・・・・・・やばい、吐きそうだ。

ふいに彼女の顔を思い出した。
ダッドさんの処で会って、一緒に食事をした彼女。

額に触れた温かい手・・・・・・。



「あのさ、アスラン断ってんの、判らない?」



普段はミゲルもラスティも女の子に対してそんな事を云う奴らじゃない。
でも二人とも俺の顔色が悪いのを感じ取ったんだろう。
目の前にいる女の子はいっぱいいっぱいでそんな事判ってないだろうけど。
・・・本当に、二人には感謝する。



「あ・・・・・・すみません!!」



そう云って走り去る彼女。
その目には涙が溢れていた。



「アスラン、大丈夫か?」



ミゲルが背を擦ってくれる。



「ああ・・・・・・。」



彼女を可哀相とは思えない。
此方からしたら良い迷惑だ。
俺は此処に勉強をしに来ている。
それなのに、恋だの愛だの、訳が判らない。
それにああ云う事が在る度に襲う症状。
蘇る記憶。
時々、この辛さが判るか!?
と叫びたくなる時さえ在る。



「早く教室に行こうぜ?」



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