Entfernug

□PHASE−5
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「レモーリンさん、レモーリンさん?」



理事長室を後にしても、彼女の瞳は呆けていて。
何処を見ているのか、何を考えているのか、判ったものじゃない。
目の前で手を振って見せても、名前を呼んでも効果はなし。



「レモーリンさん・・・・・・。レモーリン!」
「はい!!」



やっと現実に戻って来た彼女。
でもまだ修理ですね、少々お待ち下さいなんて云っている。



「大丈夫?」
「アスランさん!?あれ・・・此処は・・・?」



きょろきょろと辺りを見回す彼女。
・・・何だか犬みたいだ・・・。



「そうだった、私理事長さんにご挨拶しててそれで・・・。あ!あの・・・、特待生の話は!?」



俺を見上げる彼女に親指と人差し指で輪を作る。
それと同時にぱぁぁっと明るくなる表情。



「本当ですか!?有難うございますアスランさん!」
「いや、俺は何もしてないよ。」
「そんな事在りません!アスランさんがいなかったら、学校に入ろうなんて思いませんでしたもん。」
「そう?」
「はい!!」



自分に向けられる真っ直ぐな笑顔に、俺も自然に頬を緩ませる。



「じゃ、レモーリンさん。案内するから付いて来て。」
「え・・・・・・?」



もう緊張はしていない筈なのに、彼女の動きは止まってしまう。



「?如何かした?」



首を傾げて彼女を見ると、何故か俯いて、いじらしげに恥らっている。



「あの・・・、もう呼び捨てでは呼んで貰えないんでしょうか・・・?」
「え・・・・・・。」



先程一度だけ呼んだのは、彼女の耳にはちゃんと届いていたらしい。
あれは彼女を起こす為で、無意識の内に呼び捨ててたのだけれど・・・。



「・・・呼んでも・・・、良いの・・・?」
「勿論です!!」



不安げにそう云うと、即答される。
然も力拳付きで。



「じゃあ俺の事も呼び捨てで呼んでくれる?」
「はい!!」



彼女との距離がまた近くなった気がした。




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