まるマ短編

□如何してなんて理由はない
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・・・眠れない。
眠る気になれない。
寝ても覚めてもあの人の事ばかりで。
気分を紛らわす為に近くの庭に出ても効果はなかった。



「・・・・・・はぁ。」



私が大きな溜息をついた瞬間、ガサガサガサっと大きな音。



「っ!?」



時間が時間だけに身構える。
幽霊・・・?
それでなければ泥棒!?



「き・・・。」
「しっ、落ち着いて。」



叫ぼうとした私の口を誰かが塞ぐ。
耳元からは聞き慣れた声。
ゆっくり見上げると月明りから僅かに見えるコンラート様のお顔。



「こ、コンラート様ぁ・・・。」



私はへにゃりとその場に崩れ落ちた。
如何やら腰が抜けてしまったらしい。



「驚かせないで下さい・・・。」
「はは、すまなかったな。」



しゃがみ込んで私と視線を合わせるコンラート様。



「夜這いに来たんだが、まさか起きているとは思わなくてね。」
「?」
「立てるか?」
「あ、いえ・・・。」



力を入れてみても空しく。
暫くは動けそうにない。



「それは好都合。」
「え?」



ふわっと抱き上げられてそのまま持ち上げられる。
所謂お姫様抱っこ。



「なっ!?コンラート様!?」
「静かに。皆が起きてしまう。」
「ですが・・・。」
「立てないんだから仕方ないだろう?」



おっしゃられている事は最もなのだが、私は恥ずかしくて仕方がない。
同時に酷く胸を締め付けられる。



「・・・あのコンラート様?私の部屋は向こうなのですが・・・。」



私の部屋とは真逆の方向に進まれるコンラート様。
私はそれに首を傾げる。



「云っただろう?夜這いに来たって。このまま掠うのも悪くないかなって。」
「・・・。」



その日私は初めて彼の黒い笑顔を見ました。
同時に彼の恋人になった事は云うまでも在りません。



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