ゆめ2

□休暇と非番
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「非番だ、非番だ!」

大きな事件も解決し、俺は久々の非番を満喫しようと珍しく早起きをした。

朝飯を食って近藤さんに出かけると挨拶をして、まだ眠っていた土方さんのマヨに砂糖を混ぜ合わせ、ご機嫌に屯所を後にした。


(あぁ、天気いいし、事件の事で近藤さんと松平のとっつぁんには誉められたし、今日非番だし、気分いいなぁ〜。)


こんなに自分の機嫌がいいなんて、我ながら少し変な気分だが、まぁ、不機嫌よりはいいので鼻歌を歌いながら土手沿いをふらふら歩いて行く。


「あぁー、本当にいい天気!平和なのもいいもんだねィ。」


毎日毎日死と隣り合わせな日々にもいい加減馴れてしまった俺だが、やっぱり平和に限るわけで、


「頼むから今日は厄介ごとは起きないで下せェよ。」

と空に願わずにはいられなかった。



さて、何をしよう?駄菓子屋にでも行こうかなぁ?と土手を眺めたのが不味かった。
その瞬間、俺の先ほどの願い事は見事に打ち砕かれてしまったからである。



土手には周りの平和な空気にどう考えても不釣り合いな男が寝転がり、呑気に煙管を吹かしていた。



(…あれ…どう見ても…)


何度も何度も土方さんに写真や情報を嫌ってほど見せられ、聞かされた男、


(…高杉……だよな…)


過激で有名、政府が今一番力を入れて捕まえたいベスト3には入るであろう、攘夷志士の高杉晋助であった。


(てか、何やってんだ?こんなとこで……どうみても今からテロしますって感じじゃないけど…)


真選組の一番隊隊士として、放って置くわけには行かないが、今日は折角の非番。
それに、非番故、刀は持ち合わせていない。


(どうしよ……。)


ぷかぷかと浮かぶ高杉の煙管から出た煙が空へ立ち上る。
空に浮かぶ雲は喫煙者の出した煙じゃないのかと、この緊急時にも関わらずそんな事を考えてしまった。


「何さっきから見てんだよ、ガキ。」


(そんな事じゃなくて、高杉をどうするかだった。)

と頭の中の話を元に戻そうと思った瞬間、高杉に逆に声をかけられるという事で話しは解決してしまった。


(いや、解決してねーし。)


「あ゛?よくみたらテメェ、幕府の犬んとこのガキじゃねーか。」


しかも不味いことに向こうはこちらの素性を知っていた。
高杉には刀があるが、こちらには無い……明らかに自分は不利な状況。


(やばい…でもなんとかするしか…)


内心焦る俺を見透かしたのか、

「なんだよ。そんなビビった顔しなくても、生憎俺は今日、休暇なんだ。」


とクックックッと笑いながら言った。


「きゅ…休暇?」


「毎日、毎日色々やってんと疲れんだよ。俺だってたまには女抱いたり、散歩くらいしたくなんだよ。」


「は、はぁ…」


テロリストが何をのんきな、て言うかこいつ本当に高杉か?それくらいの疑問が浮かぶような態度。


「テメェも俺見て直ぐに斬りかかってこねぇとこ見ると、休みみてぇだな。」


「は、はぁ…」


「俺は人から見下されんのは嫌ェなんだ。こっち降りて来いや。」


「え゛……」


あり得ないような態度の次はあり得ないような事を言い出す高杉。


(何考えてんだ……?本当に……。)


「別にとって喰いやしねぇよ。」


考えたところで俺の頭で答えが見つかるとも思えないので、仕方なく高杉の指示に従った。



「お邪魔しゃす。」


少し距離を起き高杉の横に座る。

「はー…幕府はこんなガキ使ってやがんのか。いくつだお前。」


「18…ですけど。」


「マジかよ。俺と10近く違ぇじゃねーかよ。」


ハァーと少し驚きつつ高杉は俺を眺めた。


「あんたが問題起こさなきゃ、もう少し楽に働けますぜィ。」

「そいつァ、悪かったなぁ。」


そう言いつつも、全く悪びれた様子もない。
まぁ、悪いと思う気持ちがあれば最初からテロなんかしやしないだろうけど。
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