■Yaneura Dream■

□花束と…
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2日目



昨日の彼の反応があまりにも面白くて……

時期もちょうど良かった。


今日は朝早くに水を撒いておいて今は椅子を店表に出してスタンバイしている。


椅子の隣にはアルミのバケツに入った小さな花束。


赤い髪の彼に似合いそうな真っ赤な薔薇。


背も低いから元々値段が高くは無い子たち。


もう開ききってしまって売り物にはならない。


それでも数が増えれば立派な物で、その辺りも彼に似ているような気がした。


彼の場合は一人でも迫力ありますって感じだけど。




暫くぼぅっと水の染み込んだ焦げ茶色の地面を見ていた。


でもフと通りの向こうを見れば赤い髪。


私は自然に口元が緩んでしまった。


立ち上がって椅子を店の奥に片付ける。


バケツから花束を取ると滴が地面に吸い込まれた。


店から彼が来るのを見計らっていると、数メートル先の彼が立ち止まっているのが見えた。


彼はそのまま軽く息を吸い込むと真っ正面を見て再び歩き出す。


彼が店を通る…



「こんにちはっ」



その瞬間に花束を差し出して営業スマイル。


でも彼の顔を見て本当の笑顔になった。



「そんなに驚きました?」



言えば彼はしかめっ面に。



「今日からサービスを始めようかと思って是非貰って下さい」



気にせずに無理矢理薔薇の花束を手に持たせる。


いつも顔しか見てなかったし、こんなに近くに来た事も無いから知らなかった。


彼の手はゴツゴツ骨ばっていて…

体つきも引き締まっているのにかなり筋肉がついているのが分かった。



「スーツとか着て花束持ったら誰もが釘付けでしょうね」



屈んでいた体を起こして彼を見上げる。



「あっ!!
勿論そのままでも十分素敵ですけど」



にこっと笑えば彼の視線。


そして遠ざかる足音。


彼の後ろ姿が見えなくなった頃、漸く店に入る事にした。


パソコンを見て吐くため息は今日を含め3日で終わる。


店の中を見渡せば誇らしげに揺れていた赤が居なくて少し寂しそうだった。
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