終わらない明日へ
□七夕の夜の悲劇
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その夜。忙殺されんばかりの執務を何とかこなし、アスランは自室のベッドに倒れこんだ。
「今日もなんとか終わった…」
カガリの誕生日に痛恨のミスを犯して以来、主に仕事の押し付けという嫌がらせをカガリにされ続け、アスランの疲れはついに髪にまで及ぼうとしていた。
「このままではまたネタにされてしまう…!何で俺ばっかりいつもこんな不当な扱いばかり受けるんだ…!」
今日は七夕。一般家庭では短冊に願い事を書いて笹の葉に飾ったりしているだろう。アスランは思った。もしも願いが叶うなら、と。
いつも仕事を回してくるカガリとそのフォローをしてくれるキラ。今でもときどきその性格の違いから信じられないことがあるが、二人は双子だ。れっきとした、血を分けた姉弟なのだ。
だから。
「キラが代表だったら…」
自分をかばっていつも仕事のフォローに入ってくれる幼馴染みなら、きっとこんな膨大な量の仕事を押し付けたりしないんじゃないか。
そんなありえもしない願いを抱いて、アスランは深い眠りについた。
その日、カガリは小鳥のさえずりで珍しく自然と目が覚めた。
「んー!いい朝だ!」
身体を起こして時計を見る。いつもより早起きできたようだ。うーん、と伸びをしてベッドから降りようとしてはた、と気付く。
(あんな時計だったっけ…?)
同じような豪華な装飾を施された時計だったが、装飾のデザインが違う気がする。というか、この時計どこかで見たような。
カガリは不審に思いふと、部屋を見回した。
「キラの部屋ァア?!」
ヘリオポリスにいた頃の写真とか、アスランに新たにもらったハロだとか、間違いない、見慣れたキラの部屋だった。
「いつの間に…!?確かに私は昨日自分の部屋で寝たはずだぞ!?まさか寝惚けてキラの部屋に来てしまったのか!?」
カガリは慌てて両隣を確認した。自分以外の人間はいないことにホッとする。となると、本来の住人であるはずのキラは。
カガリはベッドから飛び降りた。
「とりあえず私の部屋に戻ってみよう。何がなんだか…」
ズカズかと部屋の入り口に向かう途中、ふいに、棚のガラス戸に映った自分の姿が目に飛込んできた。
「なッ?!!!」
そこには本来の部屋の住人の姿があった。
「キラァアアアア―ッ!!!!」
バン!
扉は今日もカガリの元気有り余る攻撃に耐えた。
「へ…?」
凄まじい音に夢の世界にいた部屋の住人は、強制的に連れ戻された。
「やっぱり私だ!!お前中身はキラだろう!?」
寝惚け眼、起きてそうそう何を言われてるのかさっぱり意味がわからない。身体を無理矢理起こされガクガクと肩を揺さぶられ、正常な思考がまたも遠くに追いやられる。
「ちょっと待って…」
ぼんやりと突然の来客の顔が目に入る。
「ぼ…く…!?ってえぇっ!??」
キラの思考が一気に覚醒した瞬間だった。
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