終わらない明日へ

□あなたの幸せと私の幸せ
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『突然ですが、キラ・ヤマトと、カガリ・ユラ・アスハは結婚しました。今後は病めるときも健やかなるときも支え合って生涯二人で歩んでいきます。
――キラ・アスハ
  カガリ・ユラ・アスハ』

おそらく結婚式の際に撮影したのであろう、これ以上にない幸せそうな表情を浮かべたキラとカガリの写ったはがきの裏写真を見て、ラクスはわなわなとうち震えた。




【あなたの幸せとわたしの幸せ】




朝、キラの仕事は朝ごはんを作ることから始まる。隣でぐっすり寝ているカガリを起こさないようにそーっとベッドから抜け出して、キッチンに向かう。ぼんやりとした頭を起こすために、ひとまず洗面所に向かい顔を洗う。洗い終わって顔をあげれば、締まりのない顔が鏡に映っていた。寝起きに加え、この幸せそうな緩みきった表情。キラはごはんを作り終えた後起こしに行くカガリの姿を想像して、さらに破顔する顔を隠そうともせず、キッチンへ向かった。

たった二人だけの結婚式をあげて3ヶ月。周囲に知らせるのも面倒、とカガリに押し切られてこっそり式をあげた。この3ヶ月、二人のラブラブ熱々っぷりは世間一般の新婚夫婦のそれを遥かに凌駕していた。寝るのも一緒、お風呂も一緒、行ってらっしゃいのキスも朝飯前。幸せの絶頂にある彼等を誰もとめる者などいなかった。

トントンと包丁を一定のリズムで刻む。味噌汁の食欲を誘う香りが漂ってきた頃、「キラ…」とかすれた声が耳に届いた。

「カガリ!おはよう、自分で起きてくるなんて珍しいね。今日は雨でも降りそうだね」
「言ってろ…」

普段ならパンチの一つでも飛んできそうなところだが、寝起きの彼女にはそんな元気もなく、無言でテーブルの椅子にどかっと腰をかけた。それはこの3ヶ月でよくわかっていたことだったから、キラは特に気にすることなく、出来上がった料理をカガリの前に並べていく。いつもならここで「いただきます」といって二人仲良く食事を食べ始めるのだが…。

ふいに、来客を告げるチャイム。カガリが不機嫌そうに眉をしかめた。

「誰だよこんな朝っぱらか…」

そのチャイムが鳴り終えるか否か、チャイム連打。チャイムの応酬。ピンポーンという本来の音はどこへやら、ピピピピなんていうどこぞの機械の電子音のよう。

「だぁああ!うるさいッ!誰だよ!!」

おかげでしっかり覚醒したカガリは怒りを露にして玄関先に向かった。キラも突然の来客に思い当たる節がなくて、首を傾げながらカガリの後に続く。チャイムはいまだ鳴りやまず。カガリのほっそい堪忍袋の緒がプッチンと切れた。

「そんなに鳴らさなくても聞こえてる!!常識ってもんがあるだろ!」

怒声を響き渡らせ玄関を蹴り開けた先には、ツツーッと静かに涙を流す幼馴染みの姿があった。



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