終わらない明日へ

□congratulation!
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「一段落ついたかな」

午前中いっぱいかかってやっと書類の一角の処理を終えて、キラは息をついた。半日あればおそらく視界はずいぶんすっきりすることだろう。

時計は昼の1時をゆうに回っていた。そこで初めて空腹感を覚えて、そしてあることを思い出す。

(そういえば今日カガリどうしたんだろう…?)

オーブの官僚邸にいるときに限るが、12時を回る頃には決まって昼ごはんの誘いに来て、強引にキラを連れて行くのに。今日は外出の予定はなかったはずだ。何か公務でトラブルでもあったのだろうか。

ルルルルル…

私用の携帯電話がポケットから着信音とバイブで知らせる。取り出してみると、ディスプレイに表示されたその名前はラクス・クライン。

「はい」
『おめでとうございますわキラ!』

何が、なのか聞く間もなくラクスは続けた。

『一番にお祝いの言葉をお伝えしたくてこうしてお電話させていただきましたの!たくさんお話したいことはありますけれど、残念ながら今は時間がないのでまた後日お相手してくださいな。それでは失礼しますわ☆』

プツン

ツーツー、という電子音が後には残され、キラは携帯片手に呆然となっていたのも束の間、

「というわけだ!」

なにがというわけなのか、何で電話の内容が聞こえているのか、そもそもいつの間に部屋に入ってきたのか。聞きたいことは山ほどあれど、猪突猛進、有言実行、善は急げをモットーに己れの道を突き進む唯一の血を分けた半身に、その声は届きそうもなかった。

「明日は結婚式だ!」

先ほどのラクスの電話の内容と、カガリのそのキテレツ発言とどこに因果関係があるのか簡潔に説明してもらいたいと心の底から思った。

「…誰の?」

なんとなく、予測はついたがそれでも聞かずにはいられない性分なのがキラらしい。

「は?お前と私のに決まってるだろ」

なんでそんなあたかも当たり前だろヤボなこと聞くなよとさも言いたげに逆ギレ風味なんだろう…。

「あぁ、式の準備の心配はないぞ!ラクスが滞りなくやってくれたからな!」

そんなこと聞きたいんじゃないし、だからなんでラクスなの。ってカガリが「私はこれを着るんだ!」ってすっごく嬉しげに指し示してるカタログ、タキシードしか載ってないんだけど。

それより何より。

「ねぇ、カガリ。僕らの関係って一応周囲に秘密だったよね…?」

確かにキラとカガリは付き合って暫く経つ。だが、戦時中に判明したことだが、二人は双子で、世間にはその関係を公表できずに隠し続けてきたはずだ。ましてやカガリの立場からして、そのことが露見されれば国家の一大事にもなりうるだろう。



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