終わらない明日へ
□オーブの日常
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「平和だな…」
アスランは感慨深げにつぶやいた。それは戦争がなく自らが戦場をかける必要がないという意味で言ったものではない。ここ最近の彼の日常について語ったものだ。彼にとって毎日がサバイバルだった。
オーブ国家元首カガリは非常に頼もしい為政者だ。しかし、彼女の半身である人物キラがからむと人が変わったように暴走するのでそのフォローに回らなければならなかった。キラが動ける場合はそれほど苦にはならない。彼もまた優秀でフォローは慣れたものであり、二人でかかれば問題はすぐにでも解決できる。危険なのはキラが動けないときだ。以前カガリがキラに休暇を取らせるという目的で国外へ脱走したことがあった(過去数回)。あのときは悲惨だった。悪夢の一週間を体験し、体重は3キロも落ちた。
ザフトにいたときは好条件下ではたらかせてもらっていたことを思い知る。数日に一度くらいの頻度で自分の選んだ道は果たして本当に正しかったのだろうかと疑問に感じることがある。が、ここ数日それはない。過去に起こった出来事から考えれば不気味なくらい何もない。
アスランは疑問に感じることもなく、不気味に思うこともなく、おそらくほんのひとときであろう平和を甘受し、サクサクと書類を片付けていた。
コンコン
ノックの音に意識は扉に移る。
「どうぞ」
「お久しぶりです、アスラン」「ルナマリア…?」
ザフト式の敬礼のあとにルナマリアはにこりと笑った。愛用していたピンクのスカートでなく、正式のザフトの軍服を上下とも着用している。自分がザフトにいたころがふいに懐かしくなる。あの頃はシン、ルナマリア、レイの3人に手を焼かされ…、いや、いびられたものだ。
(いびられ…?)
ふとアスランは悟った。二度目にザフトに復帰したあのときから自分はコキ使われてばかりじゃないかと。苦労人のポジションを知らず知らずのうちに選びとっていたのは自分自身ではないか。
(明日からは脱・苦労人だ!手始めにカガリに休暇の申請をしてみよう)
そして一言で却下されるのはいつものこと。それでも諦めがよくないのがアスランという人間だった。オーブでの彼の立場はあまりにも低かった。
「あの〜、なんかわかんない一大決心してるとこ悪いんですけど」
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