終わらない明日へ

□運命物語
2ページ/23ページ


「ええと、」


置いてけぼりのキラはぽりぽりと頬を掻いてみて、次にうーんと首を捻ってみる。

目的も何も告げなかったが、両親捜しの旅とみて間違いないだろう。日ごろから思いを募らせてたことは互いに熟知している。だとしても、仮にも一国の王子と王女、身勝手に行動していいものか。ここは奔放な片割れを止めるべきだろうか?

勝ち気な姉の顔を思いながら、押し付けられた衣服を広げる。

「う…そ…」
カガリ――――!!!??











その頃中庭では、カガリが背丈に不相応な剣を振り回していた。鋭い眼光は見えない敵を捕え、空を斬る。そして全ての敵を地に伏すと不敵に微笑い、剣を背に納めた。

「遅いなー、キラのやつ」

姫にしては粗野な言葉遣いは誰に学んだのか、城の者がいくら直そうとしても直らない。
どかりと柔らかな芝にあぐらを掻くとそのままごろりと横向きに寝転ぶ。草が頬にくすぐったい。
空は青く太陽は暖かく、ゆっくり眠りに落ちていきかけた時だった。何時になく慌てた声で弟が自分を呼ぶのが聞こえた。

(やっと来たか)
「おーい! キラー!」

カガリに気付くとキラは真っ赤な顔でカガリに詰め寄った。

「カガリ! これ、スカートじゃないか!」
「なんだーまだ着替えてないのか。しょうがないヤツだなぁ」
「僕は男だよ!? スカートなんてはけるワケ…」
「しっ!」

言葉の途中でカガリはキラの口を塞いだ。不服そうな目のキラの耳元で「追手だ」と口早に言うと、キラの手を引き走り出した。
キサカがキラとカガリを呼ぶ声が遠くで聞こえた。













それから二人は走って走って、城を抜け出し、下町の一角の民家に走り込んだ。

「カガリ!?」
「邪魔するぞミリアリア!」

ミリアリアと呼ばれた少女は驚きながらも二人を椅子に座らせた。
キラは物珍しそうに周りをきょろきょろしている。

「今日はどうしたの?」
「旅に出る事にした! こっちは弟のキラ! よろしくな!」
「やーっぱりカガリって王家の人なのねー。こんな服、王家しか着ないもの」

ミリアリアは少し目を丸くしてキラのいでだちをまじまじと見た。その視線に気付いたキラはおずおずとミリアリアに目を向ける。

「あの…」
「私はミリアリア・ハウ。カガリの友達よ。よろしくね、キラ!」

あっ、呼び捨てでもいいのかな?とミリアリアが首を傾げれば、勿論だ!とカガリが胸を張る。

「ねぇキラ、その服どうにかしないと悪い人に絡まれちゃうわ」
「あ、…そうかな?」
「だーかーら! さっき下町の服を渡したんだ。早く着替えろ」
「でもスカートだし…」
「スカート!? カガリってばもう!」
「時間がなかったんだよ。たまたま手にとった服が女モノと男モノでさ」

私はそんなぴらぴらしたもんはきたくないからな、とごく当たり前のことのように言い放った。じゃあ弟にはかまわないのだろうか、と聞く耳もたずのカガリにキラは一言言いたくなった。

「ほんとにカガリはしょうがないんだから! ごめんねキラ、うちに男物の服があれば貸してあげられたんだけど…。嫌だと思うけどその格好だと危険なの」
「わかった…」

キラはミリアリアの説得に、仕方なくスカートを握り締め、トイレに消えた。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ