終わらない明日へ

□わがままお姫様
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お前は馬鹿か、と突っ込んでやろうかと思ったが、カガリがあまりに深刻そうな顔つきをしていたので、でかかった言葉を飲み込んだ。

「そんなに悩んでいるなら本人に直接聞け」

「それができないからお前のとこに来てるんだろ?!」

「それで事態は解決するのか?」

カガリはうっ、と言葉につまった。

「…わかった」

「なら早く帰れ、キラも心配して…」

「だが」

イザークの言葉を切ってカガリが割って入る。嫌な予感がした。

「今日はここに泊まらせろ!!キラに心配させてやるんだ!」

「貴様はガキかぁああ!!帰れ!即刻帰れ!!我が家のシャトルをチャーターしてやるから今すぐ帰れぇええ!!」

ついにイザークの堪忍袋の緒が切れた瞬間だった。






ジュール家のシャトルによって強制送還されたのは翌朝のことだった。昨夜仕事を終えた直後にプラント行きのシャトルに飛び乗ったのだから、まさにトンボ帰りもいいところである。

「今更そんなこと聞けるわけないのに…」

足取り重く自宅へ着くと、温厚なキラがいつにないすごい剣幕で迫ってきた。

「カガリ!!君ったらいったいどこに行ってたんだ!!おおごとになるといけないからできなかったけど朝になったら捜索隊を出すところだったんだ…!でもよかった…」

キラの両目にはうっすらクマができていた。なんだか嬉しくて申し訳なくて、カガリは素直にごめん、と謝った。

「反省はしてる…。ただ、どうしても納得できないことがあって、イザークの家に行ってたんだ」

「イザークの?!」

意外な人物の名が出てきてキラは目を丸くした。

「お前、好きなヤツがいるんだろ?それで最近一人でオフ取るんだろ…?何で私には言ってくれないんだよ…たった一人の肉親なのに…」

言いながら今にもその瞳から涙をこぼしそうになるカガリにキラは慌てふためく。

「好きなヤツってどういうこと…?話が見えないよ…」

「じゃあ何で一人でオフ取ってたんだよ!お前は秘密って言って教えてくれなかったじゃないか!」

「え?あぁそれはね、カガリ…」

キラがちょっと待って、とカガリに伝えると奥の部屋に引っ込む。玄関を入ったすぐのところでキラに捕まってからカガリはずっと立ちっぱなしだ。自宅の玄関で立ち往生なんて我ながら情けない。けれどキラの言葉を破りたくなくてしばらく待っているとパタパタとスリッパの音を響かせて、キラは戻ってきた。

「はい。今日はバレンタインデーだからね。一人でオフを取ってたのは、ラクスにお菓子の作り方を習ってたからだよ」

可愛らしくラッピングされたピンクの包みはラクスの趣味だろうか。

「お前…っ普通は女が男に渡すもんだろ!!」

「え?!ラクスはそんなこと言ってなかったけど…」

気恥ずかしくてついつい口をついて出た言葉だったけれど、胸にじんわり温かい気持ちが広がる。

「キラッ!!」

「わ、ちょ、カガリ」

思わず抱きつくとキラはよしよしと頭を撫でてくれた。

ホワイトデーは倍返しにしなくては、とカガリは心に決めたのだった。


END
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