終わらない明日へ

□突発パラレル
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(本当になに考えてるのカガリ…)

儀式が始まるまで時間はあまり残されていない。今ここで自分が訴えたところでみんなに迷惑をかけるしカガリが素直にうん、と言うと思えなかった。

キラは諦めてマーナに渡された服に腕を通した。男女が着るものに差がなかったことがまだ救いかもしれない。カガリの気まぐれに付き合わされるのはこれが初めてのことではなく、キラは重い重いため息をついた。





「お〜似合ってる似合ってる」

「もう…。なんでこんなことしたの」

儀式までのわずかな時間、キラとカガリは王の間の手前の部屋で控えていた。ご機嫌なカガリに対してキラはずいぶん疲れた様子だ。

「そんなこと決まってるだろ!お前が変な女にひっかからないように私が相手を選んでやるんだ。本当はお前に相手なんて選びたくないが…、そればっかりはどうにもならないからな。せめて私が選んでやるというわけだ!」

「そんな勝手な…。でもそれじゃあ僕がカガリの相手に変な人選んじゃったらたいへんじゃないか」

「それは問題ない。私の相手となったからにはいくらでも鍛えてやるからな!少なくとも王国中から選ばれた戦士の中に入っているんだからそうひどいヤツはいないだろ」

「なんかすごい言いようだね…。うん、けどありがとう。カガリなりに僕のこと考えてくれたっていうのはわかったよ」

「バーカ。私はいつだってお前のことしか考えてない。結婚したって、お前は私がずっとずっと守ってやるからな」

「ありがとう。僕もずっとずっと君を守る。大切な大切なお姉さんだからね」

「キラさま、カガリさま。準備が整いました。どうぞこちらへ…」

使用人がやって来て王の間への扉を開く。カガリは特に動じた様子もなく、しかしキラは不安でいっぱいになりながら足を進めたのだった。





「キラ、カガリ。彼らが国中から集められた勇猛な戦士たちだ。背中を預けて戦える、そう思える人間を選びなさい」

現王であるウズミの厳粛な声にキラは内心心臓を跳ね上がらせた。通常なら女性を選べばよかったのだが、自分がカガリになってしまった今選ばねばならないのは男なのだ。とても複雑である。このまま魔法が一生解けないなんて考えると軽く死にたくなってくる。

「では、キラ王子」

呼ばれて足が出そうになるところをすんでのところで抑え、カガリが武装し片膝をついた女性たちのもとへ向かうのをじっと見届ける。自分の姿を遠くから眺めるというのはなんとも不思議な心地がした。

カガリは一直線にある女性のもとへ向かい、顔をあげるように言った。珍しい桃色の髪に、透き通ったブルーの瞳を持った美しい女性だった。

「名は?」

「ラクス・クラインですわ」

「父上、決めました。私は彼女を妃と、ラクス・クラインを妃に迎えいれます!」

カガリがラクスの手を取り並び立つ。が、城内は静まり返ったままだ。まだもう一人の主役であるカガリ(正確にはキラだが)の相手が決まっていないからである。

「続いて、カガリ王女」

キラは内心ヒヤヒヤしながら歩を進めた。武装し片膝をついた男たちはみな頑強な若者ばかりだと思う。適当に選んでしまうことも可能だが、その人物は自分でなくカガリと結婚することになるのだ。カガリのために、そんなことはできないししたくない。かといって一目ですべてを見抜くなんてことはそう簡単にできることではない。

(どうしよう…)

キラが目を泳がせていると、ふいに赤い瞳と目が合った。本来こちらから声をかけるまで頭は下げているはずなのだが、その少年はそれを守っていなかったのだ。

(――?!)

その瞳を見た途端、思考が真っ白になりからだが勝手にその少年のもとへと歩み始めた。キラがはっきりとした思考を取り戻したときには少年の手を取り、彼を相手に選んだのだと高らかに宣言した後だった。城内は拍手と歓声に包まれていた。

「よろしくなカガリ姫。…いや、―――キラ王子」

少年、シン・アスカの言葉にキラは瞳目し、カガリはその様子を眉をひそめて見ていた。

王子と王女が入れ替わって儀式に望んだことにより、魔族との争いに大きな戦局の変化をもたらすことなど…、このとき誰も知る由がなかった。


END

※この話に続きはありません。
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