終わらない明日へ

□Smile,again.
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「‘あのこと’は伝えないつもりですか?」

カガリの背中が見るからにびくりと震えた。琥珀の瞳はこれ以上ないほど不安に揺れ、大きく見開かれていた。

「そんな…っ、そんなこと私から言えるわけがないだろう?!それに今のアイツが受け入れられるわけない!きっと壊れてしまう…!」
「このままでも、キラはいずれ倒れてしまいますわ。キラは優しく強い方。彼を、信じましょう」

カガリは泣き崩れた。己の不甲斐なさに、二人の閉ざされてしまった未来に。嫌悪し絶望し、ただ涙を流すしかなかった。



◇◆◇


いつ来ても目に痛いほどの白い空間はまるで自分を責めているかのようだ。カガリはそこで変わり果ててしまったキラの姿を見た。

「お前…っ!」

カガリは思わずキラの肩を揺さぶった。そこでようやく焦点の定まらなかった瞳がカガリを捉えた。

「カガ、リ…」
「お前…お前っ!」

カガリはひたすらにキラを抱きしめた。キラ自身を責めることも非難することもできなかった。アスランの状態を招いてしまったのは自分なのだ。どうして慰められよう。どうして咎められよう。何も言葉が出てこない。ただでさえ細身の四肢はさらに痩せて。アスランに勝るほど、その表情からは生気が感じられなかった。

「ごめん、ごめんなぁ…!!」

心のままに、カガリは言葉にした。口をついて出るのは陳腐な謝罪の言葉ばかり。けれども、壊れたおもちゃのように、繰り返すしかなくて。

「けど!勝手だっていくらでも罵ってくれてかまわない!それでもお前まで失いたくないんだ、私は!!」
「うし…なう…」

ぼんやりと、イメージが浮かぶ。愛しい人が、もう二度と還ってこない。どんなに待ってもどんなに愛しても、二度と自分に微笑みかけてくれることはない。

“キラ!”

そう、まるで自分のものみたいに名を呼んで、微笑む彼が深淵に消える。

涙が、溢れた。

「キラ…、落ち着いて、よく聞いてくれ」

瞳を真っ赤にして、それでもカガリは努めてはっきりと言葉を連ねた。

「アスランはもう二度と目覚めない…っ」

こみ上げてくる嗚咽に耐えながら、罪の意識に苛まれながら。

「もうずっと、一生!このままなんだ…!」

ぽろぽろと。今までどこかで堰き止められていた分の、悲しみが溢れだした。悲しい。つらい。何で。どうして。どうして、こんなことに。リアルに、心に迫ってくる。やっと、現実として。あまりの悲しみに目を背けた現実が、さらにひどい現実となって襲いかかってくる。

「キラ…!」

カガリはキラを強く抱きしめた。

心が、悲鳴を上げる。アスラン、君がいない世界なんて。そんなの僕にとって、何も。何も、意味ない。生きていたくない。傲慢だと、勝手だと言われても、嫌なんだ。嫌だから。

だから。君がもう一度、笑ってくれる世界に。ただ君が笑いかけてくれたら、僕は。

“キラ”

僕は。



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