日記小咄
□牡丹遊郭
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遊郭ぱろ
格子から見える蝶々は
ひらひら過ぎて
手を伸ばしても影さえ掴めない
僕は一人ぼっち
<牡丹遊郭>
「アレン君、下を向いちゃだめよ」
黒髪の彼女は続けた
「顎を上げて、視線を反らしたらだめよ」
格子の先には産まれて初めて見る風景が広がっていた
連なる提灯、行き交う人々、喧嘩に客引き…
きらびやかな世界
全て僕には関係の無い世界が僕の前に広がっていた
「下を向いたらだめよ、アレン君
下を向いたら私達はおしまいなのよ」
彼女は毅然と背筋を延ばし
凛とした顔でいる
「そうよ、偉いわアレン君」
一度も目を合わさずに彼女は僕に教えてくれた
僕は
名前も知らない人に売られた
2008427