日記小咄
□蓮
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汚泥の中
もがき苦しみ
掴んだ華は仏の華
蓮
綺麗な濡れたように艶やかな黒髪がアレンは好きなのだ
高く結い上げてきちりと結んだ髪紐が気になって仕方が無い。
だから珍しく、大変珍しく神田がうたた寝などをしていたら考えるよりも早く指が動いた。
長い睫毛
調った鼻梁
形の良い唇
そっと順に指でなぞってしまう
「綺麗な…人」
その、綺麗な人、と寝台を共にして、あられも無い声を上げてしまった自分を思い出してアレンは急に恥ずかしくなってしまった。
神田の形の良い唇で昨夜は自分の屹立を嫌、と泣き出してしまうまで散々に弄ばれてしまった。
−も…ぉ、嫌、死ん…じゃ…ぅ!
助けて、とはらはらと泣いて神田の髪を掴んだ。
恥ずかしい、唇に触れていた人差し指が震えてしまいアレンは手を戻そうとした時に、何故か指先が急に見えなくなった。
「あっ!……えっ?」
よくよく見れば自分の人差し指が神田にぱくりと食べられていた。
「あっ!嫌…えっあっ、なんで?」
指先に歯がかつりと立てられた
「なんだよ、また俺に惚れたのか、」
もやし、独特の愛称を意地悪そう囁きながら神田の唇がにや、とあがった。
「何時から…起きてたんですか?」
「お前が部屋に入る前から」
アレンの指が熱い口腔に深く迎入れられ、ぺろりと舐め上げられた。
「ひゃぁ!」
「なんだよ、そんな声だして」
夕べの事でも思い出したか、まるきり心の中を見られてしまったようでアレンは返事さえ覚束ない。
「ちが…い、ます」
アレンの切れ切れな返事は何処までも肯定を示してしまい神田がまたにやと笑った。
「好きなだけ舐めてやるから、出せよ」
「まだ、暗くなって無い…です」
「関係、ねぇだろ」
アレンの人差し指が昨夜の屹立のように愛撫されアレンは身動きさえできなくなってしまう。
「許…し…て」
「まだ、なんもしてやってねぇだろ」
引きずり込まれたソファに神田を見下ろせば恥ずかしさにいたたまれない、自分の身体はちらちらと欲に燈されてしまっていた。
「アレン」
「…ぁ」
重なった唇が熱いのはどうやら自分だけではないらしいとほっとしながら、次の瞬間には身体を重ねるいけない期待に胸が苦しくなってしまった。
「お前のせいじゃねぇよ、」
俺が欲しいんだ
耳朶に囁かれれば視界が素早く反転して神田が自分の上に居た。
「出来るか?」
こくりと頷きながら、濡れてしまった指を神田の髪紐にかけてしゅるりと引いた。
「うめぇじゃねぇか」
一面の漆黒の中で再び重ねられた唇に
アレンは瞳を閉じた。
おしまい
後は二人だけの秘密