捧げ物
□好き…と言う言葉ひとつ
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「準備は出来てる?」
「はい!先生!」
額の前に垂直にした手を持っていき了解のポーズを取るアカリにチハヤは嘆息を吐いてみせる
「なに、その先生って…」
「だって今から料理を教えて貰うんだもん!チハヤ先生よろしくお願いします!」
青いエプロンを前に掛け、にこやかに即答をするアカリにチハヤは不満そうな顔をするものの、その表情は何処か嬉しそうである
今日は仕事が休みのために家でのんびり過ごそうと考えていたチハヤだったが突然の訪問者の頼み事に断る事が出来る筈もなく渋々と言った様子で『料理の先生』を引き受ける事になった
「チハヤ…やっぱり、迷惑だった?」
「……く、くだらない事言ってないで手を動かしなよね。」
チハヤの表情の意味する所を分からずに不安気に見上げてくるアカリに微かにだがチハヤは頬を染めて視線を流し台へと移す
「はい!取り敢えず、卵でも溶いて!」
いきなりボールを渡されて困惑するアカリだがそっぽを向きながらも作業を進めてくるチハヤに安心したのか、小さく笑みを洩らすと「は〜い!」と元気よく答えた