過去拍手
□バカップルなふたり1
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「なあ、かなでちゃんは俺の事、好き?」
「……っ!」
蓬生に間近から問い掛けられてかなでは顔を真っ赤に染める。
「可愛ええな。真っ赤になってリンゴみたいやね。…で、どうなん?」
それでも、お構い無しにからかい口調で問い掛けてくる蓬生にかなでも恨みがましく睨むが、それも蓬生にとっては可愛い仕草なだけで微笑みを崩す事はない。
「…〜っ。す、好きに決まってます」
かなでの言葉に蓬生は本当に満足気に微笑むと次はとんでもない事を言い出した。
「そか、嬉しいわ。俺もかなでちゃんが大好きやで。…ほなら、キスしよか?」
「なっ!何言ってるんですか!」
流石にその発言にはかなでも、逃げ腰になるが幾ら逃げたいと望んでも目の前には蓬生。両隣には蓬生の手が置かれ完全に逃げ道を塞がれている。
「む、無理!絶体無理ですっ」
「……かなでちゃん。本当は俺のこと嫌いなん?」
かなでが全力で拒否すれば途端に蓬生は捨てられた小動物のような寂しげな瞳を向けてくる。
流石にそれにはかなでも…
「嫌いな訳ないです!蓬生さんのこと大好きですよ!」
全力で否定。すると、蓬生はホッとした様子で微笑みを戻し
「ありがと。なら、キスしてもええよな」
次はかなでの確認を取るでもなく、いきなり距離を縮めればかなでの唇に触れるだけのキスをする。
「…っ!ほ、ほうせ」
「同意の上や。…けど、まだかなでちゃんが足りひんよ」
そう言えば
唇、頬、額、瞼と次々とかなでに唇を落としていく。
「…っや、蓬生さ」
「ほんま、可愛ええな」
そのまま、かなでの腕を引きソファーに倒そうとしたら蓬生の頭に物質そのものにしたら、痛みはそうないであろう物体が飛んできた。
見れば柔らかなクッションがラウンジの床に落ちている。
「痛いわ。なんやの…千秋?今、ええとこやったんやで邪魔せんといてよ」
「ふざけるなよ、蓬生。なに公然の場で堂々と小日向を襲ってるんだ!」
「襲っとるやなんて、人聞き悪いなあ。これは同意の上やで」
同意とはどの口が言うのだろうか?恥ずかしがるかなでに無理矢理キスを迫り、今まさに押し倒そうとしている…しかも、ラウンジで。
「見てみろ!如月は何も見なかった事にしてラウンジから出ていくし、弟の方は固まって動かなくなって、赤面してフラフラと出て行ったユキを至誠館の奴等が追い掛けて行ったぞ」
「〜っ!だから、蓬生さんダメだって言ったじゃないですか!」
体勢を整えたかなでが回りを見ると確かに先程よりも人数が減ってる事に真っ赤になりながら蓬生に訴える。
「な、なんで…こんな場所であんな事するんですかっ」
「なんでて…ふふ、かなでちゃんが好きやから。何処かしこでも、好きや言うてキスもしたいんや」
「…〜っ」
真っ赤になるかなでに愛しげにそれを見つめる蓬生。
この場にいるのは二人だけではないのに甘ったるい雰囲気を作り出す、目の前のカップルに東金は深く溜め息を吐く。
(ば、馬鹿馬鹿しい…)
そう心の中で毒づけば、もう相手にする気にもならずに部屋を後にする。
かなでの瞳には蓬生
蓬生の瞳にはかなでしか映っていない。
静かになった部屋の中で次は同意の上で口付けを交わす。
ショックのあまり固まっていた響也が大事な幼なじみの濃厚なキスシーンを目撃して、再び意識を失うのは、これから数分後の事である。
end