過去拍手
□きみがすき
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トントン、と叩いて綺麗にパカッと割れて中から飛び出る黄色い塊とドロッとした液体。
キッチンで鼻歌を歌いながら料理に勤しむ、かなでの姿を見ながら蓬生は思う。
(小日向ちゃんは良いお嫁さんになれそうや)
自分だけのためにエプロンを付けて毎朝の食事を作ってくれるかなでの姿を思い描けば朝が苦手な蓬生でも、その姿を見るためだけに早起きも苦にはならないだろう。
(好きな子が、自分のためだけに作ってくれる料理。…幸せな光景やんなあ。………好きな、子…そや!)
好きな子と言う言葉にピン!と思い付いた蓬生は料理中のかなでに近寄り。
「おはようさん。相変わらず、器用やね。感心してまうわ」
「あ、蓬生さん!おはようございます。…そんな事ないですよ。これくらい普通です」
「普通ちゃうて。小日向ちゃんの料理はほんまに頬が落ちるくらいに美味いからね。
…今日は卵料理か」
「ありがとうございます。嬉しいですけど、照れますね。はい、蓬生さん。卵は大丈夫でしたよね?」
「ああ、好きやで。ところで小日向ちゃんは卵の白身と黄身やったらどっちが好きなん?」
「え…白身と黄身、ですか?」
そうそう、と
何処か期待に満ちた表情でかなでの言葉を待つ蓬生。
「そうですね。
私は…きみが好きです」
「そか、奇遇やね?
俺もきみが大好きやで」
きみがすき
(今はこんな形やけど、いつかあんたと心から伝え合える関係になりたい)
「そうだったんですか?本当に奇遇ですね。じゃあ、黄身を生かせる料理も考えなくちゃですね!私、頑張りますね」
「ん、期待しとるよ。
…ほんまに大好きやからね。きみが…」
「はい、楽しみにしていて下さい!」
end