金色のコルダ3

□365日、愛してるって言いたい
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サクサク
コトコト…
台所で鼻歌を歌いながら料理に勤しむ可愛い奥さんの背中からそっと近付けば後ろから抱き締める。


「きゃっ!…ほ、蓬生さん、料理中にくっつくのはやめて下さいって言ってるじゃないですか」


「…ん、おはよ。かなで」


「寝惚けてるんですか?おはようございます。ほら、離れて下さい」


そう言われても、離れるつもりも毛頭ない俺はよりかなでを抱き締める力を強うする。


柔らかな、甘い匂いに離れがたいわ。


「朝飯より、かなでが食べたい」


「…ふふ、何を言ってるんですか。私は食べられませんよ?お腹空いてるなら、もうすぐ用意が出来ますから座って待っていて下さいね」


この子は、ほんま結婚して3年経つちゅうのに相変わらずのぼけぼけや。
まあ、そこが可愛いんやけどね。


よしよしと頭を撫でてくるから名残惜しいけど離れて大人しくリビングのソファーに腰を掛けて待つ事にした。


そうしてると、ふと目に付くのが壁に設置してある時計。


(…もうすぐやな)


頭ではわかっとっても気分が落ちてくのがわかる。


「おぎゃゃゃっ!」


ほら、きたわ。
そのけたたましい泣き声を聞くとかなでは慌てて寝室にと駆け込む。


俺の事は後回しなのにな。
わかっとるんよ。
あの子は俺と彼女の愛の結晶や。
俺かて…自分の息子が憎い訳やないわ。むしろ、愛しとるし。


けどな、かなでを盗られたみたいで悔しいんよ。




















「蓬生さん、どうかしましたか?最近、機嫌が悪そうですよ」


寝室から戻ってきたかなでは俺の不機嫌な表情に気付いたのか、こっちに近寄ってくる。


「…別に、何でもないわ」


自分の息子に焼きもちを妬いとるなんて言える筈もなくそっぽを向いて答える。


そうしてると、かなでが構ってくれるて知っとるから。


「嘘ですよね?何かあるなら言って下さい」


ソファーの前にしゃがんで顔を覗き込んでくるかなでは抱き締めたい程可愛ええけど、そんなんや俺の心は浮上なんかせえへん。


拗ねて困らせたろうと、かなでに背を向けてソファーに転がる。


「私、何かしましたか?蓬生さん」


「…かなでは何もしとらんよ。ただ、かなではあの子の母親である前に俺の奥さんやんな」


「…そう、ですね」


「母親になると、亭主は放っておかれるんやな〜て思うとるだけや」


そこまで言ったら
後ろからくすくすと笑う声が聞こえてきた。


俺の大好きな感覚で頭を撫でられると見えない事を良いことに拗ねた振りをしながら微笑む。


「焼きもちですか?」


「ちゃうよ。俺かて、あの子の父親や。あの子の事は愛しとる。…せやけど、最近のかなでは俺を放っておき過ぎや」


「そんなことないですよ。この間の休日だってお出掛けしたし。毎日一緒に寝てるじゃないですか」


それだけじゃ足りへんもん。
もっと、毎日一緒におりたいし、たまには俺を優先してほしいんよ。


それに、毎日…毎晩、毎朝、毎時…ずっと、愛してるて言うてほしい。
俺は誰がおっても、どんな場所でもかなでに言うてほしいんや。


今、思うと…最近のかなではそう言う言葉が足りん気がしてくる。
俺は毎日のように愛してる、愛してる…言うとんのに。


もしかして…もう、俺のこと愛してへんのかな。と思うてしまうと、また気持ちが沈んでくる。


すると、背後から小さな溜め息。
それにビクッとして恐る恐る振り返る。


(…呆れてしもうたん?こんな俺、もう嫌いになったん?)
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