シリーズ
□三人で恋する〜副部長〜
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映画館に来てみたら、それは結構話題の映画のようで見に来てるお客さんもカップルが多いようだ。
座席に座って買ってきたパンフレットを見てみると話の内容は『ふたりの男の間で揺れる少女の物語』…内容を読むと酷く複雑な気分が襲ってくる。
ひなちゃんを挟んだ隣にいる土岐を見てみても、どうやら俺と同じ心境のようで苦笑いを浮かべている。
マイペースなひなちゃんの事だ。恋愛ものの話題のある映画というだけで純粋な気持ちで、この映画を選んだのだろう。
その証拠に内容を読んでも「楽しみだな〜」と嬉々としている。
まあ、そんなところも可愛いと思ってしまうんだけど。
…そうこうしている内に照明が落ちて映画の幕が開く。
横目で見ていれば、やはりひなちゃんは感受性が豊からしく、楽しい場面ではにこにこと微笑み、悲しい場面では涙を流しと…表情をころころと変える。
(…ほんと、可愛いな)
ふと、ひなちゃんの膝の上に置かれた手を見れば胸に沸き上がる好奇心に逆らえずにひなちゃんの指に自分の指を絡めるとビクッと震えて、ひなちゃんが此方を向くから微笑みかければスクリーンの光が当たってひなちゃんの頬が赤く染まっているのがわかる。
すると、ひなちゃんは困った表情のまま俺から視線を土岐へと。
俺も土岐に視線を向けてみれば…
(考える事は一緒か…)
土岐の手も俺とは反対側のひなちゃんの手としっかり繋がっていた。
「もう、二人とも映画見てましたか?」
待ち合わせ時にはひなちゃんから手を繋いできたのに映画鑑賞中に手を握られた事が余程、恥ずかしかったのか映画館から出た後もまだ頬の熱が冷めやらないようだ。
「勿論、ひなちゃんのお勧めだからね。きちんと見ていたよ」
「うっわ。軟派な言い方やね〜。小日向ちゃん、気をつけや。榊くんは絶体に遊びなれとるわ」
「はは、どの口がそれを言うんだか。ひなちゃんも知ってるとは思うけど、土岐は横浜にも神戸にも沢山のファンがいるみたいじゃないか。遊びなれてるのは案外そっちなんじゃないか?」
「なに言っとんの。俺は一途な男やで。榊くんと違うて小日向ちゃん一筋やからね」
「…その台詞、そのまま返させて貰うよ」
とひなちゃんの頭の上で話していれば小さな笑い声。
「…わかってますよ。大地先輩と蓬生さんが遊びのつもりで私に告白してくれた訳じゃないって…だから、」
2、3歩前に進み出て此方を振り返ったひなちゃんの言葉に心臓が大きく跳ねる。
「「……っ」」
「あ!この先に美味しいソフトクリーム屋さんがあるってニアが言ってたんです!行ってみましょう」
そう言って先に歩き出すひなちゃんを見れば俺と土岐が思う事は同じだろう。
「今回は小日向ちゃんに一本取られたな」
「そうだな。彼女は思ったより大人みたいだ」
だから、私も二人に本気で答えたい…か。
まだ結果は見えなくても、その言葉だけで救われた気分になるのは俺が今の関係を本気で嫌ってはいないからなんだろう。
「大地先輩!蓬生さん!何してるんですか〜?」
大分、前を歩いていたひなちゃんが此方を振り向いて呼び掛けてくる。
「小日向ちゃん、そないに先に進まんでもソフト屋さんは逃げんよ」
「まあまあ、ひなちゃんが楽しんでるなら良いじゃないか」
そう言えば、再び呼び掛けるひなちゃんの元へ俺たちも歩みを進める。