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□拍手の吹き溜まりたち
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ゆらゆらゆら、人は揺れて揺られて生きる生き物なんだって最近気付いた。生まれる前に腰を揺すった男女同士から私は出来上がって、母のお腹の中の羊水でたぷたぷ揺られて、生まれてからはいろいろな人に揺すられながらあやされて、嬉しくなって繋いだ手を揺らして、そんな風にゆらゆら揺れて生きていくのが私たち。だって、ほら現に私も今、揺られてる。
「…あ…っ」
「……」
「ちく、さ…」
一つになった所の暖かさとか感触とか所謂、快感が脳にガンガン響いて、脳みそがゆらゆら。らしからぬ湿った目を見つめられなくて目線もゆらゆら。
「あっ…ん…」
「何で…言わないんだよ」
「な…にを?」
「初めてだって」
「…んっ…あっ」
だって初めてなんて言ったら千種はいつもみたいにめんどいって言って抱いてくれないでしょう。この決死のお願いをそんな風に断れたりでもしたら私の心臓を一突きするのと同等よ。お願い、じゃないわね、淫誘?よかった、私はちゃんと娼婦を演じられていたのね。どこで学んだのか忘れた甘い声で、砂糖なんか目じゃないくらいの甘いキスで貴方を誘って、やったのは自分なのにひどく虚しい。空虚、空って言葉は「そら」って読めばとても素敵な文字なのに、「から」って読んでしまうとなんだか無償に悲しくなって、上を見れなくなる。この行為もそう、千種に抱かれてるなんて素敵な想いとこれが最初で最後になるだろうという確信が千種を私の目で見れなくする。最後なら目に焼き付けるべきなのに。
悲しいね、悲しいよ。揺らされるだけ揺らされて私の心は止まり方、止まるという行動さえ忘れてしまった。ゆらゆらゆら、この胸の痛みの原因だってきっと揺れている所為。特定のもの以外に無関心すぎる貴方は簡単に私を抱いた。来る者拒まず、そんなご自由にどうぞみたいな思想は私の心の揺れをますます大きくして、痛いね、辛いよ。
「ちくさ…」
「何…」
「これ…で、少しは…私、も…っ揺らせた…かな?」
ゆらゆらゆっくり揺れてゆるゆる深いところに染み込む様に落ちていく。
end