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□呪縛で呪いを解く
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「じゃあ、続きね」



まぁ、いっか。と思って後ろを振り向いたら部屋の入り口に女の子が立ってた。二つに髪を結って、目がくりくりしてる人形みたいな子。瞬きを忘れたみたいに震えながら現場を直視してた。泣き出すかと思ったけど唇に歯がめり込むくらい噛みしめて堪えてた。マフィアの子供は簡単に泣いてはいけない!とか言われてたのかな?そんなことはどうでもいいんだけど。マフィアの血筋だし、恨みはないけど殺そう、そう思って笑顔を作って一歩前に出た。びびって腰を抜かすかお漏らしかどちらかだろうな、と予想してた。

でも、違った。その子、私に向かって人殺しって大きい声で叫んだの。人殺し?誰が?私…?違う、人殺しはマフィア。私は人殺しなんかじゃない。私は、違う。違う違う違う。私は……。違うって何度も叫んだ。でもその子は何も言わずこっちを睨みつけていた。私も昔、他人に向かって人殺し、と叫んだことがあった。そして、私はいつの間にか叫ばれる側になってた。その日から私は人を殺せなくなった。それに比例して千種を愛そうとした。人を愛すればもしかしてこの不快感が消えるかもしれない、なんて淡い期待を抱いてた。


「でも、駄目だった。千種を愛すれば愛するほど、愛されれば愛されるほど、罪悪感ばかりが募った」

「それと抜けるのと何の関係があるの」

「やっぱり千種にはわからないか…」

「聞かせておいて失礼だよ」

「今まで私が殺してきた奴らは生きる資格なんて無いと思ってた。でも、だからといって私にそいつらを殺す資格も無かった」

「資格なんて…」

「誰も自分以外の誰かを殺してはいけない、そんなの当たり前のことなのに。私たちはそれさえ知らない」

「俺は、骸様が殺せと言えば殺す資格だってあると信じてる」

今から言うことも、私が最近気づいたことの一つ。これを言ったら間違いなく千種は私を撃つ。何の迷いも無く、いつもみたいに。

「千種、骸様は神じゃない、ただのくだらない人間の一人だよ」

悲しくも私の予見はあたり、腹部に銃弾が入った。私たちはあまりに知りすぎて、そしてあまりに知らなすぎた。きっとあの銃弾は夫婦のぴったり真ん中で止まっていたのだろう、繋がったまま果てた心をそこに残す為に。

「忘れ…ない、で」

「……」

「わた、しを…殺した…の、は」

誰でもなくあんたよ、千種。

一人の人間が死ぬことの大きさを、そしてその時を止めたのは自分だと理解して、雁字搦めになりなさい。





end
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