─未知なる閲覧室─
□ホットココア
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『ザーザー……』
今日は、雨が休むことなく降り続けている。
僕は、授業中そんな雨を窓から眺めていた。
「(……ちょっと、肌寒いなぁ)」
10月。
少しずつ、空気が冷たくなってくる時期。
寒いのが苦手な僕は、すぐに反応する。
愛用している赤いマフラーを、そろそろ出さなければならないかな……、と思った。
『──キーンコーンカーンコーン……』
授業も終わり、いそいそと帰りの準備をする。
早く帰って、ゆっくり家で休みたいから。
そうだ……、ホットココアを飲もうかな。
甘い甘いココアを飲めば、体も温かくなる。
幸せな気分を味わおう。
「兄さん、僕ちょっと早めに帰って良いかな?何かもうクタクタでさぁ」
「ん?……そっか、良いよ。僕は、まだ先生に用事があるから先に帰ってなよ」
「ありがとう!じゃあ、また後でね」
「あぁ、また後で」
兄さんに断って、鞄を持って。
帰ろうとした。
が。
「(……あ、そういえば)」
ふ、と後ろの席を見る。
すると、翔も帰る準備をしていた。
「(翔……、今日は雨だから部活休みだって言ってたよね)」
……。
僕は、無意識にトタトタと、翔の元に向かっていた。
「お、零士!どした?」
いつもの様に、やんちゃな笑顔を見せながら話してくれる翔。
その表情が、僕は大好き。
「今日、部活休みなんでしょ?」
「おぅ、休みだぜ?つまんないよなぁー、全く。そこの部分は俊が本当羨ましいよ」
「あはは……」
口を尖らせながら、文句を言う。
体を動かすの、好きだもんね。
「……今日、暇?良かったら、僕の家に遊びに来ない?」
部活があるから、こういう時にか誘えないもの。
思わず、顔を染めてしまう……。
「……っそーだなー、翼もこんな天気だから外で遊ぼうってまでは言わねぇだろうし、良いぜ♪」
「本当!?ありがとう!」
嬉しい僕の表情を見て、翔はまたニカッと白い歯を見せる。
「(……っへへ、なかなか一緒に居られないかんな。誘ってくれてサンキュ)」
「……っ!」
ボソリと、彼はそう言ってくれて。
凄く、凄く嬉しかった。
「んじゃっ、行くか!」
「うん」
靴箱まで行って、靴をはいて。
お互い傘をさし。
一緒に、僕の家へと歩いていく。
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