雑記

□駄文
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吉岡正巳が冷めかけたラーメンの汁を
すすり終わるころには
とっくに象の行進は終わっていた

象というのは無論ベナレス象のことである

吉岡に言わせれば
ベナレス象に象らしい特徴はない 
確かにその鼻は長い 
巨大な耳は一日中体を扇いでいる

吉岡は思う だとしても だ

しかし吉岡はラーメン一杯を食べるのに
25分を費やすような男なので
これはあまり気にしないでもらいたい
彼が特に示唆に富む訳ではなく、
かつ
豊かな感受性を持っている訳でもない
ことはこの場合特筆に値する
    (中略)
政府の放送局はいつも
正午にこの象の行進の映像を流すのだったが
吉岡の持つ古い受信機は
今や殆ど砂嵐しか映すことはなかった
吉岡には確信があった
今の彼を彼たらしめてるものは
今の彼にはこれしかないのだ
その確信は幼い頃の思い出の中にしかない、としてもだ
象の行進は続いている 
今日も工場から工場へと
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