2006〜SHORT
□まるでわかっていない
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「沖田、何で死んだの?」
私は最大な疑問を口に出して言ってみた。しかし口に出したところで答えは出てはこなかった。疑問だ。不思議だ。ミステリーだ。もしかしたらホラーだ。
何度考えても判らないので、土方さんに聞いてみた。
「知らねーよ。単細胞だからだろ」
私に振り向きもせずに、背中を向けたまま言った素っ気無い一言で片付けられてしまった。どうしましょ、沖田が何で死んだかさっぱり分からない。
今度は山崎君に聞いてみた。
「サドだからじゃないですか。今までの悪行が祟ったんでしょうよ。神の制裁でしょ」
それは山崎君の憶測にすぎない。単なる恨み辛みだ。しかし山崎君は私に視線を絶対に合わそうとしなかった。
今度は坂田さんに聞いてみた。
「ああ?沖田君?あれ、死んじゃったの?俺葬式とか行ってねーんだけど」
ぼりぼりと頭をかいている坂田さん。そうは言っているのに、坂田さんは喪服姿だった。そういえばさっき沖田の葬儀でちらりと姿を見たような気がする。
それにしても、やはり誰も沖田の死の真相を知らないらしい。
仕方ない。私は最後に近藤さんに聞いてみた。すると近藤さんは急に泣き出した。そして涙ながらに鼻水とか汗とかありとあらゆる体液を吐き出しながら言った。それにしても汚い。ゴリラ。風呂に入ってから出直してきてよ。
「あいつが、応援を、待たずに、突っ走って行く、から…総悟ォォォォォ!」
そう、攘夷だ何だって騒ぎ立てている連中に一人で……だから死んだ。
「何だかしっくりこないな」
私は再び口に出してみた。今思った事を。
「沖田、何で死んだの?」
それで少しだけ沖田の死を実感した。ああ、そうか。沖田って死んだんだっけ。だから葬式してるんだよな。だから皆喪服着てるんだよな。そういえばそうだった。
だとしたら、私は今からどうすればいいんだろう。何をすればいいんだろう?
とりあえず、今思いついた事を口に出してみる事にした。
「イタコを雇って沖田を光臨させて、それで貸してたお金返してもらうことにしよう」
まるでわかっていない
だって、突然の事だったんだもの。はいそうですか。で片付けられるようなものでもないでしょ。え、そうでもない?そういえば、お金以外にも漫画貸してたんだった。