2006〜SHORT

□終焉交響曲
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「なるほど、そういう事か」

「そういう事です」

「俺は嘘を吐く奴は嫌いだ」

「それはすいませんでした。だけど、私って大嘘吐きなんです。だってそれが仕事なんですよね。残念ながら」


手からぶら下げた刀が、ゆらゆらと揺れている。一見隙ばかりに見えるが、こうしてると心が落ち着くのだ。
目の前にいる高杉は、胸の前で腕を組んだまま、じっと動かずに、片目で射抜くように私をじっと見つめている。


視線だけで殺されてしまいそうだ。


だが、こっちだってそれなりに肝は据わっている。鬼兵隊なんておっかない組織に入って、情報を漏らすくらいに。


「それにしても、高杉さんって本当に綺麗な顔してますよね。危うく惚れそうになりましたよ。自分の立場を忘れかけて。高杉さん、死にたくなかったら大人しく捕まってくれませんか?」


おどけた口調で言うと、さっきまで微笑していた高杉から笑みが完全に消えた。


「それはこっちのセリフだ。お前、殺されたくなかったら、さっさとここを出てけよ。今なら少しくらいの情報、真選組にくれてやる」

「殺さないでいてくれるんですか?それは…ありがたいんですけどねー。私もそんなことで帰ったら逆に副長に殺されるんですよ。残念ながら」

「お前、中々可哀想な位置についてるなァ」


無表情に言った高杉に、私は口元を吊り上げて少しだけ笑った。
しかし、目は一向に笑ってはいないし、高杉に合わせたままの視線も、逆に鋭さを増しただけだった。


「なあ…もう一度だけ言っておく」


ぽつりと吐いたその一言で、ふと思った。



あ、私死ぬかもな。



「今なら見逃してやる」


考えた。

もしもここで私が逃げ出してきたら、副長は許してくれるだろうか?お前の命の方が大切だったって、そう言って私を迎えてくれるだろうか?

いや、そんな事されても、私は自分を許せない。自分のプライドがそれを許さないだろう。


「もしも、そうしたとして、高杉さんが許して、真選組の皆が許してくれても…」


ぎらりと睨んだ高杉は、顔色一つ変えずに、飽きないその綺麗な顔を私に向けていた。

ああ、やっぱり綺麗な顔。やっぱり好きになりそう。

でも、そんな感情は不必要だ。しかも、ここまで追い詰められている状況では、尚の事。


「私は自分を許せないんですよね。残念ながら」


ゆらゆら揺らした刀を、高杉を貫くために構えなおした。そして、それを高杉めがけて突き出した。

スローモーションに動く自分自身の手と、スローモーションに動く高杉の手。その手には、いつの間にか握られた刀があった。



ほら、聞こえてきた…



スローテンポに流れる終わりを告げるシンフォニー。















それは私を地獄へと運んでくれる、高杉から私への最高のプレゼント。



終わりはすぐそこまで迫ってる










(雨兎に捧ぐ、シンフォニー)
0717 朋河小夜

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