『霞シリーズ』番外編集
□理由さえ無いような・・・
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・・・―――「君は、本当に、李 絳攸が嫌いだよねぇ、皇毅」
いつもと全く変わらない微笑みを口元に履いて言う晏樹に軽く溜め息を吐いた
とはいえ、晏樹のこの微笑み以外の表情(かお)を見た憶えなど、長い付き合いだがその気になれば本気で指折り数えられそうなほどしか、見たことがないような気はするけれど・・・
「ああ。嫌いだな」
隠すつもりも無いからハッキリそう返した
けれど今日はどうやらそれで会話を終わらせてはくれないらしい
クスッ・・・と薄く、軽薄に微笑った晏樹が、
「ねぇ、どうして、嫌いなの?」
重ねて訊いてくる晏樹の、微笑みの底は見えない
応えずに居たら、また晏樹がクスリと微笑った・・・
「本当に、李 絳攸って、好かれるか嫌われるかのどちらかだよね」
そう、どうしてか、ある程度絳攸に関わった者は、絳攸を好くか、嫌う・・・
『興味が無い』ということがほとんど無いのだ
でも、それもあと数年で、彼はこの朝廷に、居られなくなるようだけど・・・
「ねぇ知っている?『どうして嫌いなの?』って訊かれて、ちゃんと応えられたらそれは本当の『嫌い』で、同じ問いに応えられなかったら、それって、『好き』ってことなんだって・・・」
にっこり、と、いつもより深く綺麗に微笑った、晏樹が気にくわなくて、皇毅は眉間の皺を深めた・・・
「つまり?」
初めてこちらから訊いたら、応えはすぐにあった・・・
「根拠の無いわりに説得力のある理屈だろ?その理屈でいくと、清雅は本当に李 絳攸が嫌いってことになるけど、君は彼が、好きってことになるね―――」